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日野市石田・あおい動物病院

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ちょっと詳しく

スキンケア①

皮膚の構造は、人も動物も外側から順に「表皮」、「真皮」、「皮下組織」の3層からできています。また、皮膚には被毛が生え、被毛を作る毛球、汗腺、皮脂線などが分布しています。このような構造を持つ皮膚ですが、人と動物では異なる特徴も見られます。以下に人と犬とを例にとって、少し詳しく述べてみたいと思います。

 

皮膚の構造

人は、特に女性を中心として、お肌の手入れに余念がありません。しみ、しわ、くすみ、たるみ、乾燥、べたつき、ニキビ、敏感肌・・・。数々の肌トラブルに対して、あの手この手で対策を立てています。お店にもスキンケア用品はずらりと並び、華やかなCM、雑誌の特集、通販番組などで情報はあふれかえっています。女性に限らず、皮膚の薄い赤ちゃん用や、メンズケア用品もたくさんあります。スキンケアに無頓着な人でも、毎日洗顔し、よく水分をふき取るくらいのことはしていることかと思います。丈夫な毛におおわれていないむき出しの皮膚はとても無防備な存在に感じます。

それに対して犬達は、フサフサの被毛に覆われ、暑い日も寒い日も元気に飛び回り、飼い主さんたちが散歩をサボりたくなるような雨、風、雪の日でも、わが身ひとつで喜び勇んで外に繰り出し(しかも裸足で!)、おまけに、しみ、しわ、たるみ等の心配もなくうらやましいほどです。(もちろん、寒さ対策で服を着たり、お天気の良い日以外の散歩を好まない犬達もたくさんいますが・・・。)とても頑丈で良質のコートをまとい、無敵のバリアにおおわれているような印象さえ受けます。はたして、犬達の皮膚は人間に比べて、どれくらい丈夫なものなのでしょうか?

皮膚の構造を見てみると、大きく分けて、外側から順に「表皮」、「真皮」、「皮下組織」の3層でできているのは、前に述べた通りです。ところが犬達は、豊かな「被毛」で外部から身を守ったり、保温したりはしていますが、「表皮」だけについて比べてみると人の1/5~1/6程度の厚さしかありません。「表皮」の一番外側は「角質細胞層」と呼ばれるところで、外からの刺激、乾燥、紫外線によるダメージ等から体を守っています。そのため、「表皮」の薄い犬達は思いのほか、人に比べてダメージに対してトラブルを起こしやすいといえます。

また、人の正常の皮膚は弱酸性(pH5.5くらい)ですが、犬は弱アルカリ性(pH7.5くらい)です。雑菌類は酸性の環境よりもアルカリ性の環境の方が増殖しやすいので、この点からも犬は人に比べて、細菌性皮膚炎等のトラブルを起こしやすいとも言えます。

また、人と犬とでは皮膚に存在する「汗腺」の分布にも違いが見られます。「汗腺」には、「エクリン汗腺」と「アポクリン汗腺」の2種類があります。人のほぼ全身には「エクリン汗腺」が分布しており、私達が暑い時や運動した時にかく「汗」を分泌します。それに対して犬は「エクリン汗腺」は足の裏の肉球にしかありません。そのため、暑い時や運動した時にはハアハアとパンティングをして、唾液を蒸発させ、体温の調節を行っています。

もう1種類の「アポクリン汗腺」は、人では、わきの下などの一部にしかありませんが、犬では全身に分布しています。この「汗腺」は脂肪分の多い、ベタッとした汗を分泌します。この汗が酸化したり、細菌よって分解されたりすると異臭を放つようになります。『犬臭い』のもこの臭いです。

 

皮膚の生まれ変わり・・・角質細胞層について

人も犬も皮膚は一定の周期で新しく生まれ変わっています。皮膚の一番外側の層である「表皮」は、外部からの刺激から内部を守っていますが、そこで重要な働きをするのは「表皮」の最外層の「角質細胞層」とその間に存在する「細胞間脂質」です。この「角質細胞層」は、表皮の最下層の「基底層」で作られた細胞が、分裂・分化・成熟しながら上の層へと移っていき、一番外側にある「角質細胞層」まで移動してくると、「フケ」となって脱落します。この時、病原微生物やアレルゲンなどを物理的に除去する役割も果たします。この過程をターンオーバーといい、健康なひとでは、ほぼ28日サイクル、健康な犬の場合では約20~22日サイクルであるといわれています。また、脂漏症等の犬ではターンオーバーが3~5日、膿皮症の犬では5~7日と、極端に短くなっていることもあります。健康な犬のフケはごく細かいもので、目立つものではありませんが、脂漏症や感染性の皮膚疾患、アレルギー性皮膚疾患等のときには、大きく目立ったフケがたくさん見られることがあります。いつもは目立たないのに冬場だけカサカサの細かいフケが増えるときは乾燥が原因のこともあります。加湿して良くなることもあるので試してみてください。また、緊張した時に急にフケが湧き出てくる時もあります。ゾーっとして立毛筋が毛を逆立たせ、一時的に「角質細胞層」がまとめて浮き上がって出てきたものです。病気に関係したフケでは、犬種、大きさ、色、におい、形、乾燥性か脂性か、伴う病変はどんなものか、基礎疾患は何か等によって判断しますので、「このフケは何?」と思ったらご相談ください。

 

皮膚のバリア機能・・・細胞間脂質について

表皮の最外層は前に述べたように「角質細胞層」とその間を埋めるように存在する「細胞間脂質」、それと「結合水」によって構成されています。このうち「細胞間脂質」は主に「セラミド」、「遊離脂肪酸」、「コレステロール」、「コレステロールエステル」等によって構成されています。これらの「細胞間脂質」は、『親水基(水になじむ部分)』と『親油基(あぶらになじむ部分)』からできており、「角質細胞」を取り囲むような層状の構造をとっています。この「細胞間脂質」は「セラミド」が、他の「細胞間脂質」とともに『親水基』と『親油基』を規則的に配列させることによって水分を結合させ、水分を保持することを可能にしています。この結合水が、皮膚の保湿を担っています。(親水基+親油基…親油基+親水基…結合水…親水基+親油基…親油基+親水基…結合水…親水基+親油基・・・といった脂質二重層という層状構造をしています。)他に「細胞間脂質」は、脂質二重層の柔軟性や硬直性、細胞間の結合や剥離(コレステロールの役割)、外部刺激やの異物の皮膚への侵入を防ぐバリア機能にも関与しています。

「細胞間脂質」の正常なバリア機能が働いている時には、花粉、ハウスダスト、ダニ、カビ等のアレルゲン、異物、細菌などが侵入できないようにガードできますが、バリア機能が低下している時(「セラミド」の減少など)は、アレルゲンなどの異物や細菌などの微生物が容易に侵入してしまうようになります。(堤防が決壊すれば川の水がどんどん町に流れ込んできてしまうようなものです。)そのため、『ダメージによる表皮の破壊→抗原(アレルゲンや細菌など)の侵入→炎症や痒み→引っ掻き等によるさらなる表皮の破壊→・・・』という悪循環が繰り返されてしまうことになります。また同時に脂質二重層の破綻により水分の保持機能も低下してくるため皮膚は乾燥し、刺激に対してより過敏になります。

そして「角質細胞層」のターンオーバーの乱れや、「細胞間脂質」の減少等の不具合によりバリア機能が低下した皮膚では、アレルゲンや微生物などの侵入増加・水分の喪失・犬が引っ掻く、かじるなどの物理的ダメージを与えることに加えて、「ケラチノサイト」(「表皮」の「角質細胞層」を構成する「角化細胞」のこと)によって細胞同士が情報を伝達しあう物質が誘導され(サイトカインネットワーク)、さらなる炎症を引き起こし、ますます皮膚のダメージが憎悪していくという負のスパイラルに陥るのです。このようなメカニズムによって、皮膚疾患は悪化・再発・慢性化・難治化しやすくなってしまうのです。(犬アトピー性皮膚炎などのアレルギー性皮膚炎・脂漏症・膿皮症等で顕著に見られますので、今までいっぱい頭を悩まされてきた飼い主さんもたくさんいらっしゃいますよね。)

これらの皮膚の正常な成り立ち、および皮膚疾患におけるメカニズムは複雑な仕組みですが、それぞれが一連のものとして絡み合っているということはイメージしていただけたでしょうか。

 

皮膚にダメージを与える病気

一口に『犬の皮膚病』といっても、本を開けばざっと300種類以上もあります。でも、飼い主さんたちがよく悩まされる代表的な皮膚病は次にあげるようなものが多いことでしょう。これらの病気は単独のこともありますが、合併しているケースも大変多くみられます。聞いたことがある病名はありますか?

 

●アレルギー性皮膚炎、犬アトピー性皮膚炎

接触、食べ物、ノミの寄生、環境中のアレルゲン等に反応して皮膚炎を起こしたもの。犬達は、引っ掻いたり咬んだり、こすったりでとてもかゆがります。毛が抜けたり、皮膚も真っ赤になったり、経過が長いと色素沈着(皮膚が黒ずんでくる)や分厚くなったりします。重度の犬アトピー性皮膚炎では見た目もボロボロになってしまいます。アレルギー検査による原因の特定、原因物質の除去、投薬を中心として各種のスキンケア(後述)を組み合わせて治療しますが、コントロールが難しい症例もあります。

 

●疥癬(ヒゼンダニ)、アカラス(イヌニキビダニ・毛包虫)

皮膚の内部に寄生するダニによる寄生虫感染症です。犬疥癬はとても痒みが強く時に人にも感染します。皮膚の表層にトンネルを掘ってダニが活動しますが、散歩の時に寄生してくるマダニとは異なり、肉眼では見えません。犬同士の接触やタオルの共有等から感染することもあります。アカラスは正常な犬の毛包にも若干数寄生しているとされるダニですが、このダニも肉眼では見えませんが、異常増殖してしまった時に症状が現れます。症例により痒みは様々ですが、局所型と全身型に分かれます。子犬の時の局所的な感染では成長とともに抵抗力がつくに従って治ってしまうことも多いのですが、全身性のアカラスは、きわめて重篤となります。重症化するものの多くは、遺伝性や、免疫や抵抗力低下時等で、二次感染によるその他の感染症と合併することが多く、死亡することもあります。病変部からのダニの検出と駆虫薬を使っての治療を行いますが、犬種によっては使えない薬があり、また犬の基礎疾患によって治療が難しい場合もあります。

 

●膿皮症

細菌の感染による化膿性の皮膚炎です。犬は人よりも皮膚の細菌感染に対して弱いところがあります(前述)。ポツポツができたり、皮がむけたり、かさぶたができたり、ベタベタしたり状況によりいろいろですが、痒みを伴います。皮膚に正常で存在するブドウ球菌が原因になることが多いのですが、そのほかの菌が原因になることもあります。正常では病原性がそれほど強くないブドウ球菌が皮膚についていることによって、そのほかの不都合な菌が増えないようにうまくバランスが取れているのですが、バリア機能の破綻、掻き壊しや、その他の基礎疾患などによって菌との共存がうまくいかなくなると膿皮症を起こしてしまいます。ターンオーバーを考慮した長期的な抗生物質の投与とシャンプーの併用が治療の中心となります。抗生物質も耐性を持つ菌が出てきているため、指示通り与えていただくことが大切になります。

 

●マラセチア(酵母様真菌)皮膚炎、皮膚糸状菌症

どちらも真菌による感染症ですが、症状は全く異なります。

マラセチアは、本来正常な皮膚に住み着いている真菌で、程良く皮膚に分布していることによって、その他の真菌による感染が起きにくいように共生しています。マラセチア皮膚炎は、マラセチアが正常な量より異常増殖してしまった時に起こります。好発部位は、わきの下、内股、首の下、耳、口元、顔のしわなどの擦れて暖かく、脂っぽいところです。強いかゆみと、独特の臭気を伴います。外耳炎では、ねっとりとした茶色い耳垢が出ます。皮膚は真っ赤になって、犬は必死で掻こうとします。マラセチアは、あぶら分を大変に好みますので、皮脂の分泌の多い犬種で悩まされることが多いようです。皮膚検査によってマラセチアを検出し、薬用シャンプーでマラセチアや、その他の雑菌類や皮脂を落とし、症状によっては抗真菌剤を併用します。皮脂の分泌の多い犬種や、犬アトピー性皮膚炎の既往のある犬で繰り返す傾向があります。

皮膚糸状菌症は単独ではあまりかゆくないようですが、脱毛を伴います。抗真菌剤と薬用シャンプーの併用で治療しますが、基礎疾患により治りにくい症例もあります。

 

●脂漏症

異常な皮脂の分泌とフケを伴う慢性の皮膚疾患です。乾燥性脂漏(乾燥して大きなフケがたくさんでる)、油性脂漏(脂っぽい皮膚、被毛)と脂漏性皮膚炎とに分けられます。脂漏性皮膚炎は、角化異常を伴うターンオーバーの乱れにより、フケが大量に発生します。フケのほかにも、赤くなったり痒み、脱毛、かさぶたを伴います。内分泌の異常や遺伝が背景にあるとも考えられ、マラセチア皮膚炎との合併が見られます。薬用シャンプーによる脱脂、角質溶解で、フケやかさぶたの除去、雑菌類の減少を試みます。ステロイドの投薬や、マラセチア皮膚炎のコントロール、ビタミン剤、サプリメントの使用などで軽減を図ります。

 

●内分泌疾患

犬に比較的多くみられ、皮膚症状を伴う内分泌疾患に、甲状腺機能低下症と副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)があります。どちらも、左右対称性もしくはび慢性の痒みを伴わない体幹部の脱毛(頭と四肢を残した脱毛)と色素沈着を伴います。但し、二次感染により、痒みを伴う皮膚疾患を合併することも多いです。

甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの分泌低下により発症します。特徴的にみられる症状としては、鼻すじや尾の脱毛と色素沈着、無気力、食欲の増加を伴わない体重の増加、寒がる、心拍数の減少、フケ、乾燥して抜けやすい艶のない被毛、外耳炎や膿皮症にかかりやすいなどのうちいくつかが見られます。血液検査、臨床症状を併せて診断します。

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)は、脳下垂体性(腫瘍によるものが多い)副腎原発性(副腎の過形成)、医原性(ステロイドホルモン剤の長期投与による副作用)があります。コルチゾルというホルモンの過剰分泌によって発症します。特徴的にみられる症状としては、多飲、多尿、過食、筋力・筋肉量の低下、太鼓腹、薄くてしわのよる皮膚、皮膚病にかかりやすい(細菌性、寄生虫性)等です。血液検査、臨床症状を併せて診断しますが、治療薬も高価であり、飼い主さんにとっても、犬にとっても辛い病気です。

皮膚疾患は、「一度直してしまえばもう大丈夫。」というものと、「だましだましコントロールしてあわよくば日常のケアでおとなしくさせる。」ものと、「必死で戦い続ける」ものがあります。皮膚や病気の特徴を知って、有効なスキンケア・スキンコントロールのお手伝いができたらと思っています。また、皮膚病は上に書いたものだけではありませんし、犬種、ライフスタイル、犬の年齢、食べ物、体質等によってもそれぞれ異なります。それぞれのケースのあった治療計画を立てる必要がありますので、ご相談ください。

災害時にそなえて

2011年3月11日、私たちは「東日本大震災」という未曽有の大災害を経験しました。直接、大地震や津波の被害に遭われた方々、原発事故で今なお辛い思いをされている方々、被災地に家族や友人・知人がいてとても心配された方々など、本当にたくさんの人々が恐ろしく辛い思いをしました。心からお見舞い申し上げます。

当動物病院のある東京都も交通の麻痺、ままならない家族の安否確認などやはり大混乱でした。マスコミでは専門家によって、また近い将来大きな地震が起きる可能性が高いことが指摘され、皆の防災に対する意識も高まっています。
また、その後も各地で大地震や水害などの自然災害が相次いでいます。災害は自然災害だけとは限りませんので防災意識は常に高めていたいものです。
災害が発生したら、まずは自分や家族の身を守ること。そして自分たちだけでは何もすることができない愛犬・愛猫をはじめとしたペットの身を守ることが大切です。
では、動物たちのためにはどのような備えが必要なのでしょうか。

日ごろのしつけ・そなえ

災害時には、人間だけでなく動物たちもパニックになります。驚いてどこかに飛び出していくのを防止し、安全に一緒に連れて避難するために日ごろから首輪やリード、ハーネス、ケージに慣らしておきましょう。猫は身を隠せる狭い場所に入るほうが安心する傾向が強いので、ケージに入れば比較的良い子にしていられますが、犬は子供のころから慣れていないとケージに入れることによって、吠えて吠えて大騒ぎになるかもしれません。「ケージは安全で良いところなんだよ!」と小さいころから慣れさせておいてください。普段でも旅行や病院に行く時、来客のある時など、ケージを上手に使いこなせるようなると、飼い主さんの快適度も増します。
避難時、状況によっては動物にアレルギーがある人、動物が苦手な人と一緒に過ごすことがあるかもしれません。ケージレストは最低限のマナーであり、動物と人間の避難場所が異なる場合でも、動物本人が慣れ親しんだケージは必需品です。また、予期せぬ状況で、動物とはぐれてしまうことがないとも限りません。首輪の内側に飼い主の名前や連絡先を記入して常に身につけさせたり、犬の場合は犬鑑札や狂犬病予防注射済票をしっかりと身につけておきましょう。今は動物の体(皮下)に埋め込み、飼い主の情報を専用リーダーで読み取ることができる「マイクロチップ」というものもあります。しっかり安全性も確立され、首輪がとれたり動物と遠くはぐれてしまうような事態が起きても、飼い主さんと動物を1対1で結びつけてくれるとても有効な手段です。動物病院で埋め込み、装着処置ができますので、興味のある方はご相談ください。

非常時に備え準備しておくもの(チェック表を作り、ケージに貼り付けておくとよいでしょう)

○ケージ、首輪、ハーネス、リードなど
ケージは動物本人の慣れているものが理想。首輪、ハーネス、リードは、一度使ってみてつけ方、つけ具合を確認し、大きすぎたり小さすぎたりしないか確かめておくこと。もちろん記名も忘れずに。

 

○3日分以上(特に処方食の子は5日分以上)のフード、水、食器
フードは必要分をペットボトルやタッパーウエア、透明なボトル等の容器に入れて用意しておくと便利でしょう。ラベルもしくは容器にマジックで「動物の呼び名、フードの銘柄、給与量、回数」などを記入しておくと、万一動物の世話を人に頼むようなときに助けになります。給与量一回分ずつのところに線を引いておくのも分かりやすいでしょう。
例えば、新しいフードを購入したらまず非常持ち出し用の容器に必要分をとりわけてストックし、前回分のストックしておいたフードを使い切ってから新しく購入したフードを使う・・・というように非常時用のフードが古くならないように毎回入れ替えていくのも良いでしょう。食器はフード用と水用の2つ。どちらも記名しておきましょう。

 

○うんち袋、トイレ砂、ペットシーツ、ゴミ袋、ウェットティッシュ、ティッシュ、消臭剤等
使い慣れたもの。うんち袋、ペットシーツ、ゴミ袋は少し多めに。

 

○いつも飲んでいる薬、予防薬
非常時に備えておくものではありませんが、避難する時は忘れずに持ち出せるよう、家族みんなでしまってある場所はわかるようにしておきましょう。そして忘れずに持ち出しましょう。

 

○ワクチン等の記録のコピー
動物たちも状況によっては集団生活になることもあります。自分の動物の健康を守るため、日頃から計画的にワクチン接種を実施しましょう。他の動物に病気を広げない為のマナーでもあります。またいつもと違う状況に動物がパニックを起こし、咬傷事故を起こしてしまうことも考えられます。犬は一生に一回の登録と年一回の狂犬病予防注射をうけさせてください。(狂犬病予防法という法律によって義務づけられています。登録を行わない人、犬鑑札を犬の身につけさせていない人、狂犬病予防注射を受けさせていない人、狂犬病予防注射済票を犬の身につけさせていない人はそれぞれ20万円以下の罰金となることがあります)また、万一咬傷事故を起こしてしまった場合には、条例により咬んだ犬の飼い主は24時間以内に、動物愛護相談センター多摩支所(042-581-7435)に届け出なければいけません(東京都多摩地区の場合)。また、咬んだ犬の飼い主は事故後48時間以内に飼い犬を獣医師にみせ、狂犬病の検診を受けさせなければいけません。この時、前回の予防注射の実施が有効期限内かどうか等でその後の検診回数等の対応が変わります。狂犬病予防注射実施の証明書もしくはコピーを準備しておくとよいでしょう。もちろん狂犬病予防注射実施時に交付される注射済票も有効です。(これらのことは、非常時だけでなく普段の咬傷事故後の飼い主さんのとるべき手続きでも同じです)

 

○病歴、主治医、飲んでいる薬の内容等のメモ

 

○使い捨てカイロ、バスタオル、フェイスタオルな

 

○その他必要なもの
おもちゃ、おやつなど。ただし荷物が多すぎて持ち出せないのでは本末転倒なので最低限で!

 

今回、犬猫を中心に述べてみましたが、その他小鳥、フェレット、ウサギ、ハムスター他の動物たちもフード、床敷、トイレ、保温具(多め)など同様に考えてください。また、当院HPと併せて南多摩獣医師会HP(http://www.mvma.jp/も参考にしてください。

フィラリア予防薬で駆虫できる寄生虫

フィラリア予防薬で駆虫できる寄生虫と人への感染

(ミルベマイシンA・カルドメックチュアブル・イベルメック・ネクスガードスペクトラ)

 

1.犬糸状虫(フィラリア)

犬糸状虫(フィラリア)の感染には、蚊が重要な役割を持っています。

犬糸状虫感染犬

蚊が血液といっしょにミクロフィラリアをとりこむ

蚊の体内でミクロフィラリアが感染仔虫に成長する

蚊が他の犬を吸血した時に感染仔虫をおいていく

感染成立

犬糸状虫が心臓に寄生

犬糸状虫は、犬の心臓や肺動脈に寄生して犬に右心不全をひきおこし、それにともなって全身のうっ血から肝硬変、腎不全などをおこし、死に至らしめる寄生虫です。

感染した犬は、咳、運動を嫌がる、削痩、貧血などの症状が見られます。多くは慢性経過をとり、はっきりした症状を示さず徐々に衰弱していきますが、急に血色素尿や呼吸困難、虚脱を起こし、突然死をする急性型(大静脈症候群)に移行することもあります。

死亡率の高い感染症ですが、予防法が確立されているので『犬糸状虫感染期間』にもとづいた予防薬の確実な投与により、犬を犬糸状虫から守ることが可能です。予防薬は上記の『➪』の時に犬糸状虫を駆虫するものです。

犬糸状虫は犬のみではなく、猫やフェレット、その他野生動物も感染します。

 

人への感染:極めてまれです(偶発感染)。人の体内で成虫になることは少ないですが、肺の中で腫瘤(こぶ)をつくり、肺動脈の塞栓や血痰、胸の痛み、呼吸困難をひきおこすことがあります。また、ごくまれに皮下や腹腔にも腫瘤をつくることがあります。

 

2.回虫(犬回虫・猫回虫)

犬や猫の小腸内にミミズ状の虫が寄生し、小腸内の消化した食物を横取りして栄養源としています。回虫は10~18cmと大きいので、子犬に大量寄生すると消化吸収を妨げられて発育不良になったり、腸を詰まらせたりします。虫の刺激で腸に炎症が生じたり、腹痛、下痢、嘔吐(時に虫体を吐く)を起こしたりすることもあります。また、回虫は腸の中だけにとどまらず全身を移動するので、その時に呼吸器や肝臓に障害をあたえることもあります。

感染経路は4ルートあります。

  • 感染母犬の胎盤を通じて母犬から子犬へ(胎盤感染)
  • 感染母犬の乳汁をのむことで母犬から子犬へ(乳汁感染)
  • 環境中の感染能力のある虫卵を口から摂取する(経口感染)
  • 回虫を体内に持っているネズミや鳥などを食べて幼虫が動物の体内に入りこむ

経口感染のうち、生後2~3カ月の子犬の場合は、摂取された虫卵は小腸で孵化し、体のあちこちをめぐって2カ月ほどで成虫になり、小腸に戻ってきて産卵し、回虫卵を環境中にばらまきます。生後3カ月以上の子犬や成犬の場合は、摂取された回虫卵は小腸で孵化した後、全身の組織に分布してそこにとどまります。(妊娠すると胎盤をとおして子犬に移行していきます。)また、猫の場合は成猫になっても小腸に寄生して回虫卵を環境中にばらまき続けます。

 

人への感染:人は③か④のルートによって感染します。

③の経口感染の場合は、砂場や犬や猫の体や毛についた回虫卵が(動物に触った後や回虫卵が付着しているものに触った後)手に付着して口に入ったり、口もとに回虫卵をつけた犬に舐められたりすることなどにより感染します。回虫卵はベタベタした糊状の膜におおわれたくっつきやすい構造をしており、動物の肛門周り、口もと、足(お散歩でくっつけてくる)、抜け落ちた毛などに付着していることが多いです。

①のルートの場合は、鶏レバー(地鶏など)の生食(かつては牛レバ刺など)によって感染することが知られています。

犬回虫は人にも感染しますが、回虫にとって人は居心地が良くないので幼虫のまま体のあちこちを移行します(幼虫移行症)。ほとんどは肝臓で死滅しますが、まれに内臓や眼に入り込んで障害をおこします(重症の場合は失明します)。予防には動物の定期的な駆虫と、節度のある接し方が大切です。

 

3.鉤虫(犬鉤虫・猫鉤虫)

鉤虫は、1.5~2cmくらいの大きさで、3対の鋭い歯牙で腸粘膜に咬みついて寄生し、血液を吸い取って栄養源にしています。そのため犬は、血便(黒色便)や食欲不振、腹痛、失血による慢性の貧血をおこします。抵抗力の弱い子犬の場合は、激しい下痢や血便のために衰弱死することもあります。

感染経路は4ルートあります。

  • 胎盤感染
  • 乳汁感染
  • 経口感染(回虫とは異なり、環境中に排泄された.鉤虫卵が孵化して脱皮し、感染幼虫となったものを口から摂取してしまうことにより感染)
  • 経皮感染(感染幼虫が皮膚や毛穴から入りこむことにより感染)

人への感染:感染幼虫がまれに経皮感染し、皮膚炎やミミズ腫れ(皮下を虫が移動するためにおこる)をおこすことがあります。皮膚の下を虫がはいまわるので強いかゆみが出ます。

 

4.犬鞭虫

犬鞭虫は、盲腸の腸壁に頭をもぐりこませて血液や体液を吸引して寄生しています。そのため、犬に腸炎、下痢、軟便、血便、粘血便をひきおこします。子犬よりも成犬に多くみられる感染症です。少量寄生の時ははっきりした症状を示さず、時々血液の混ざった粘液便が出る程度のこともありますが、重度の場合、大腸性慢性下痢、タール状の血便などがみられたり、痩せたり毛並みが悪くなったりします。

鞭虫は、虫体の2/3は細くて後ろは太く鞭のような(根っこの長いもやしのような)形をしています。卵の状態で経口感染しますが、鞭虫卵は高温多湿を好み、抵抗力も強く、戸外の土中に5年以上生存することもあります。お散歩コースが(野生動物なども含めて)鞭虫卵に汚染されているときはとても危険です。

犬鞭虫は盲腸にもぐりこんでいる虫なので、前述の3つの寄生虫よりも駆虫には多くの薬を必要とするケースもあります。感染経路は経口感染のみです。

 

人への感染:感染力をもった卵を人が経口摂取してしまった場合、まれに腸管で成虫になるといわれています。

インフルエンザについて

インフルエンザウイルスは8つに折れ曲がったRNAをもったウイルスです。A型、B型、C型があり、基本的にはB、C型はヒトのみが自然宿主ですが、A型はヒト、ブタ、ウマ、トリなど様々な動物を自然宿主とします。
馬や豚は、流行性呼吸器感染症を、鳥類には地域流行性および流行性の全身性あるいは呼吸器感染症を起こします。また、頻度は少ないですが、豚から人へ感染することもあります。
基本的には、身の回りのペットであるイヌ、ネコ、ウサギ、ハムスターなどは人のインフルエンザに感染しません。ただしフェレットは人のインフルエンザに感染しますので、お互いに気を付けてください。(つまり、人 ⇔ フェレット間の感染が成立します)
フェレットは眼脂、鼻水、鼻づまり、クシャミ、熱、下痢、時に食欲不振、脱水等を起こします。投薬により1~2週間で回復する例が多いため、ワクチン接種の必要はありません。
ただしインフルエンザは変異をすることが特徴のウイルスです。状況が変わってくることも考えられますので、最新情報には注意してください。

デンタルケア②

犬や猫を飼っていてこんなことを考えることはありませんか?

「私達は毎日歯みがきをしているのに、この子たちは歯みがきをしなくてもよいのかしら?でも、犬や猫の歯みがきのCMも目にしないし、動物だから自分でブラッシングなんてできるわけもないし。野生動物だって歯みがきはしないように本来動物は歯なんてみがかなくても大丈夫で、歯みがきは人間だけのもの…。それに、うちの子はとてもとても歯みがきなんてさせないし。…でも、口は臭いしこの歯石、簡単にとれないかしら…。」

さて、その考えは正しいのでしょうか?

正解は「本当は犬や猫にも歯みがきは必要」なのです。でも、それは何故なのでしょう。

犬も猫もキレイな歯(病院で歯垢、歯石を除去し、ツルツル・ピカピカにみがきあげた歯)は、約20分で表面は「ぺリクル」という唾液由来の糖タンパク性の膜で覆われます。ペリクル自体は無菌で、歯をコートし酸などから守る大切なものです。しかし、このペリクルを足場として歯垢(プラーク)の付着が始まります。歯垢は虫歯菌や歯周病菌などの微生物のかたまりです。他には口の中の白血球、唾液由来のタンパク質、口腔粘膜の上皮細胞、食物残渣(食べカス)などから構成されています。食べカスは歯垢そのものではないのですが、口の中の細菌は食べカスを栄養源としているので、歯垢とは密接な関係があります。歯垢はネバネバしているので水を飲んだり(人間の場合うがいや洗口剤を利用したり)」程度では落とせませんが、物理的にこすり落とすという「ブラッシング」で簡単に落とすことができます。しかし、歯垢も時間がたつといろいろな雑菌類が層状に、細菌同士が様々な物質を出しあって結びつき、ヌルヌル・ネトネトの膜状に結束してこびりつき、口の中の自浄物質や免疫物質、抗生物質などが届かないようにびっしり張り付いてしまいます。これが「バイオフィルム」といわれるものです(歯垢はバイオフィルムの一種、もしくは同じものだという考えもあります。)。

バイオフィルムは比較的新しく言われはじめた言葉なので歯垢やプラークなどより耳馴染みがないかもしれません。バイオフィルムは口の中だけでなく身近なあちこちにあります。例えば台所の三角コーナーや水回りに発生する「ぬめり」、川の中の石の表面のヌルヌルなどです。いずれもこびりつき簡単にこすり落とせないものですね。これの口の中バージョンが今回お話ししているバイオフィルムです。歯垢がバイオフィルムとなりびっしりこびりつくともうブラッシングでは取り去ることができなくなります。そして、それらに唾液中のカルシウムやリンが加わり歯石となります。歯石になるのは人間の場合25日くらいといわれていますが、犬では2~5日、猫では1週間ぐらいです。これは人間に比べて動物は口の中がアルカリ性で虫歯が少ない代わりに歯石ができやすいという口内環境の違いによります。歯石になるとその中の細菌はカチカチに閉じ込められ働くことはできませんが、歯石表面のザラザラは歯周病菌の付着する格好の足場となり、いよいよ歯周病が悪化していくこととなります。そして、歯石はいくら頑張ってブラッシングしても落ちることはありません。

歯周病菌は毒素を出して歯肉にダメージを与え、炎症をおこし、炎症によって作り出された物質がさらなるダメージを与え歯肉炎から歯周病へと悪化していきます。歯肉炎がおきると歯肉が腫れ、歯周ポケットが深くなり、歯肉の退行、歯のぐらつきがみられ、さらに進行すると顎や頬の骨を溶かしてしまうこともあります。歯が抜け落ちてしまうこともあります。歯の根のところまで感染が進むと「根尖周囲膿瘍(歯槽膿瘍、歯根周囲膿瘍)」となり目の下や頬が腫れ、骨を溶かして血膿があふれ出します(皮下膿瘍、外歯瘻)。なかには目の後ろや副鼻腔に膿がたまり、血膿の涙や血混じりのくしゃみが出たり、たまった血膿で額が腫れあがったりすることがあります。こうなっては原因となっている歯を抜いて化膿している部位を掻きだしてきれいに消毒をして縫合する外科手術を行うしかありません。しかも、このような症状を訴える犬や猫達は高齢で心疾患、腎疾患、その他の持病のため全身麻酔下での抜歯等の手術を実施するにはハイリスクとなってしまっているケースが多いです。理想は全身麻酔下での手術だとわかっていながらもやむを得ず内科的に抗生物質を投与するなどの消極的な処置しかできないこともあります。しかし、根尖周囲膿瘍は菌と膿の塊なので抗生物質の内服や注射では完治することはありません。化膿巣をかかえながら、だましだまし行くしかありません。もちろん化膿菌が全身に及んでしまう危険もあります。また下顎の骨が溶けて弱まると簡単に下顎骨折を起こしてしまうこともあります。下顎骨折となると治療は一層難しくなります。

歯肉炎から歯周病へと悪化した場合、歯肉は腫れてすぐに出血し、歯肉も歯も歯を支える顎の骨もボロボロになってしまうことは上に述べた通りですが、それだけにとどまらずバイオフィルムとなった菌の塊は歯周組織からバイオフィルムごと血流にのって体内に入り込み、血栓、化膿性腎炎、心内膜炎、肝膿瘍、肺炎などを引き起こすことがあります。我々獣医師も、デンタルケアは「口臭や歯石で汚れている」という目先の問題ではなく「全身疾患の予防の一つ」と考えています。ご家庭でもデンタルケアができるかどうかでこれらの病気にかかるリスクを下げることができるなら、何とか家族である動物達に自宅でできるデンタルケアに取り組んでみようと思いませんか?

 

どうしたら歯みがきをさせてくれるの??

今までの説明でデンタルケアの大切さはよくわかったと思います。では、現実問題として目の前の愛犬・愛猫に対して何をどこから始めればよいのでしょう?

ここで大切なのはスモールステップでご褒美を使いながら気長に気長に動物達が安心できるペースで進めていくことです。愛犬のおすわりやお手もほめながら少しずつ教えたことを覚えていますか?意外に思われるかもしれませんが猫も教えればおすわりやお手ができるようになります。成功の秘訣は上にも述べたようにご褒美(おやつ)と動物が飽きない短時間のトレーニングを気長に繰り返すことです。水族館のアシカやイルカ、シャチなどもそのような地道なトレーニングを積んでいろいろな芸を私達に見せてくれるようになるのです。

その子の性格や年齢、経験などによりマスターしていくペースは異なります。1つ1つのステップが1週間もかからずにできるようになる子がいれば1ヶ月以上かかる子もいますが、あせらずコミュニケーションのひとつと思ってまずは始めてみてください。

用意するご褒美(おやつ)は猫や小型犬なら小指の爪の1/3くらい、大型犬なら小指の爪くらいの咬まないでも飲み込めてしまう大きさのものを用意(その子にあった大きさに小さくカット)して下さい。おいしそうな匂いの大好物が良いですね。それを1つ1つの動作ができる度に1つずつ褒めながら与えてください。動物達が飽きてしまわないよう1回あたりのトレーニングは5分以内(猫はもう少し短時間かもしれません)とします。ズルをしてたまにご褒美をあげない…などということはせず、1つできたら1つあげてください。信頼関係を作ることが大切です。食物アレルギーのある子のご褒美は気をつけて選んでください。また、おやつもカロリーがあるので1日の摂取カロリーの一部に含めて考えてください。「歯みがきをするのに食べ物をあたえるの!?」と思うかもしれませんが、丸飲みする大きさであれば食べカスにはなりませんし上で説明したように歯石になるのは早くても2日目くらいなので万が一咬んで食べたとしても2~3日以内に歯みがきができればOKと考えて大丈夫です。家庭でのデンタルケアは1人でもよいですが2人でやるほうがやりやすいかもしれません。

 

ステップ1

動物の首~口元を触らせるところからスタートです。目標は片手で下顎を固定し、もう片方の手でケアするための姿勢をとれるようにすることです。動物は抱っこで前方を向かせても、仰向けでも、飼い主さんと向かい合ってもかまいません。やりやすい姿勢を探してみてください。動物は先端(足先、手先、耳、鼻、口、しっぽなど)を触られるのを嫌がる傾向があります。首元を少し触るところから始め、下顎を固定できるまで少しずつ時間をかけて慣らしていきます。(しつけやしかる時、口を押さえるとデンタルケアの時に嫌がってしまうことがあるので、マズルを押さえたり掴んだりしてしつけをすることは控えましょう。)

ステップ2

片手で下顎を支えることに慣れてきたら、同じ手の指で唇の上から少しずつ歯を触ってみましょう。だんだんできるようになったら同じ手で上顎を包むように持ち反対の歯も唇の上から触ります。それができるようになったら唇をめくったり歯を少しずつ触ったりしてみましょう(はじめは「ちょん」とつつく程度からです)。1本から始め、触る本数を増やしていきます。犬歯や前歯からチャレンジし、奥歯も触れるようになったらこのステップは完了です(この段階ではまだ口を閉じたままで良いです)。動物が親しみやすいように食べなれたフードや歯みがきペーストを指につけて匂いをつけて触ってみるのも良いと思います。

ステップ3

抵抗なく歯を触らせるようになったら「こすりみがき」に挑戦です。軍手や歯みがきシート(2つ折りにして中に人差し指をいれ、指にきつく巻きつけるようにして使用します)、歯みがき用の指サックをつけて歯をタッチするところから徐々に表面を優しくこするようにしていきましょう。慣れるために少量の好きなフードや動物用の歯みがきペーストをつけるのもお勧めです。歯みがきシートには、あらかじめミルクフレーバーがつけてあるものもあるようです。こする時は力を入れず優しく行いましょう。特に汚れがつくのは目の下あたりの大きい歯(犬の場合第4前臼歯と第1後臼歯)です。この歯は大きく窪みもあり、近くに唾液腺もあるので歯石の付きやすいところです。犬や猫の歯は「咬んですり潰す」というより「丸飲みできるように咬みちぎる」ようにできているのでハサミのようにすれ違って咬合します(犬の後臼歯は面で咬合していますが、猫は全てすれ違って咬合しています)。

ステップ4

「こすりみがき」ができるようになったらいよいよ歯ブラシに挑戦です。(この間に普通の歯ブラシではなく先端がスポンジでできたスポンジブラシを使って棒状のものに慣れさせても良いです。)歯ブラシはできれば動物用を用意してください(ブラシ部分が360°ついているものもあります)。人間用であれば乳歯用の毛先がなるべく軟らかく小さいものが良いです(理想はヘッドが前歯2本分くらいの大きさ)。大型犬は人間の歯周病用歯ブラシも使えると思います。まずはブラシを飼い主さんの手の甲に当てて「気持ちが良いくらいの力」がどれくらいか確認してください。決してゴシゴシではなくサラサラ・クルクルといった力の入れ具合になると思います。犬や猫は咬む力は強いですが、歯の表面の固い組織(エナメル質)は人間より薄くなっています。また、力が強すぎて痛かったり出血したりするとせっかくここまでトレーニングを積んできたのに嫌がってブラッシングをさせなくなってしまうこともあります。また、歯ブラシの持ち方はヘッドに人差し指を添えるか、えんぴつを持つように持ってください(歯ブラシをかじってしまう子はヘッドに人差し指を添え、かじろうとしたらサッと人差し指の指先でヘッドを引っ込めて隠してみましょう)。初めは歯ブラシを動かさずに短時間触れるところから始め、指で1本ずつ触ることを練習した時と同じように歯ブラシが触れることを慣らしてください。慣れてきたら初めは犬歯や前歯を優しく円を描くようにブラッシングし、徐々に奥の歯へと慣らしていきます。歯の面をみがけるようになったら歯と歯肉の境(本当は悪玉菌が好んで住み着いているここが一番ポイントになる部位です)を45°の角度でブラッシングしてください。

ステップ5

さらに上級者は口を開けさせて歯の内側をみがきます。歯の内側は舌に触れるので外側よりも歯石は付きにくいのですが、もちろん全くつかないという訳ではありません。犬は犬歯の後ろに親指と中指を入れて軽く後ろに反らすと口が開きます。猫は片手で後頭部を包むように頭部を支え、もう片方の手で下の前歯をゆっくり下げると口が開きます。これらも徐々にスモールステップで慣らしていき、目標は歯の外側、内側、歯周ポケットのブラッシングです。

歯みがきのトレーニングで口を触られることに抵抗がなくなれば、今後万が一お薬を飲ませる必要ができたとしても簡単に投薬できるようになります(お薬はフードと一緒か少量の水とともに飲ませてください)。

 

犬や猫も3歳くらいになると80%以上が歯周病にかかっているといわれています。飼い主さんもできる範囲で家庭でのデンタルケアに取り組んでください。最終目標までたどり着けなくても、ほんの少しだけ歯をこすれるようになっただけでも長い目で見るとケアをした・しないの差は出てきます。どうしてもデンタルケアが難しい子たちは口腔環境をコントロールするサプリメント類もあるのであきらめずに家庭に合ったケアに取り組んでください。デンタルケア上級者は上手にケアができているかをチェックできるシート(後述のオーラストリップ)で時々チェックしてみるのも良いと思います。

また、歯みがき用にガムを与えることもあるかと思いますが、固すぎるもの(骨、ひずめ、固く乾燥したアキレス腱など)は歯によくありません。歯が折れて根の感染をおこします。ガムは歯が食い込む固さのものを選び、人間は手に持って奥歯の横から歯に垂直になるように差し込み少しずつ送りながら良く噛ませてたべさせてください。むしゃむしゃっと食べてごっくんではデンタルケアの効果はほとんど期待できず、単なるおやつとなります。また、無麻酔での家庭やサロンでの歯石取りが最近問題となっています。無麻酔下の処置は動物達が痛かったり怖い思いをしてそのトラウマで口を触られることを嫌がったり、暴れて怪我をしてしまうことがあります。また、単に歯石を取っただけでは表面はデコボコであっという間にまた歯石がついてしまいます。歯石の再付着がしにくいよう、丁寧なポリッシングが必要です。さらに、歯周病の最も原因となるのは歯石ではなく歯周ポケット内のバイオフィルムです。歯周ポケット内の歯垢、歯石、バイオフィルムの除去、ポリッシングは全身麻酔下での動物病院での処置以外にでは実施できません。歯石が全くなく歯もピカピカなのに口臭がひどく重度の歯周病にかかっているということもあります。

デンタルケアは家庭でのデイリーケアと動物病院での定期的なケアといった二人三脚が理想です。がんばって共に動物達の口腔と健康を守りましょう。

 

おすすめできるデンタルケアをサポートするもの

☆C.E.T犬猫用歯磨きペースト(犬、猫)

C.E.T二重酵素システム(グルコースオキシダーゼ、ラクトパーオキシダーゼ、チオシアン酸カリウムを配合して唾液中のハイポチオシアンイオンの産生を促し、口の中の酸素量を増やす作用があります。酸素が増えることにより口の中の歯周病菌である嫌気性菌(酸素の存在を嫌う口腔内の悪玉菌)が増えにくくなり歯垢や口臭をコントロールします)を採用した歯みがきペーストです(チキン、モルト、バニラミント、フィッシュの4フレーバーがあります)。毎日の家庭でのデンタルケアの際、シートや軍手、歯ブラシにつけて利用するのみならず、かじって遊ぶおもちゃに塗りつけてあげるのも効果的です。酵素が口の中に入れば効果があるので指や器につけて舐めさせたりご褒美であげるのも良いと思います。1日2回くらいの使用が効果的です。歯みがき時には人間用の歯みがき粉(乳児用であっても)は使用しないでください。人間用は飲み込むことを想定して作られていませんし、犬猫はうがいができません。胃腸炎などの体調不良だけでなく、キシリトール配合のものは犬に与えると死亡することもあります。

☆ベジタルチュウ(S、M、Lサイズ)(犬)

歯みがきガムは噛むことで唾液の分泌を促し、歯とこすれることで汚れを取れやすくするものです。ベジタルチュウは、それらの作用に加えてC.E.T二重酵素システムを採用した高品質のガムです。100%植物原料由来、消化率97%以上のものです。便量も増えず丸飲みしても消化してしまうので胃腸内異物となることがありません。やわらかめなので2~3カ月令の「噛むこと」を学習し始める子犬(乳歯期)から与えられます。Z型の形状で犬が噛みやすく万が一飲み込んでしまった時でも気道が確保できるように配慮された構造になっています。子犬の頃からじっくり噛む習慣をつけると大きくなっても丸飲みしない習慣ができます。成犬でもやわらかめのおいしく歯とおなかに優しいおやつを探している方にはお勧めです。姉妹品にC.E.T二重酵素システムを採用した牛皮とチキンを主原料にしたチキンフレーバーのガムがあります。こちらはベジタルチュウより噛みごたえがあります。

☆ビルバックチュウ(猫)

こちらもC.E.T二重酵素システムを採用した猫用の姉妹品です。猫の歯に合った層状構造をしたガムです。

☆オーラベット(犬)

小麦、大豆、米を主原料としたやや厚みがあり適当な弾力でしっかり噛めるガムです。噛むことで歯垢、歯石の沈着をおさえて口臭を軽減します。歯垢のもととなる細菌の増殖を抑制する効果があり、人間の歯科治療にも使われている「デルモピノール」が配合されています。消化の良いガムですが原材料に含まれるアルファルファ(マメ科の植物)、パセリフレーク、銅クロロフィンナトリウム(葉緑素)の色が口の周りや前肢についたり、排泄物などにみられることがあります。それらの着色は天然由来成分によるもので健康上の問題はありません。

☆ラクトニンDX(犬、猫、その他)

ラクトフェリンとラクトパーオキシダーゼを配合した粉末です。1包(1g)あたり5cc(小さじ1)のぬるま湯にといて与えるかフードに混ぜて与えてください。

ラクトフェリンは唾液中(他には母乳、涙、汗など)にふくまれる鉄結合性の糖タンパク質で、歯周病組織の炎症や破壊を防ぎ、強力な抗菌作用、バイオフィルム形成阻害、その他の免疫補助作用や創傷治癒促進効果があります。ラクトパーオキシダーゼは哺乳類の乳や唾液、涙などに含まれる物質です。ラクトパーオキシダーゼ自体に殺菌作用はありませんが口腔内に含まれる様々な物質と反応して高い抗菌作用を発揮し、口腔内の細菌の活動を押さえ歯肉炎や口臭を抑えます。

生物本来に備わっているものを配合しているので口腔だけでなく、皮膚、傷、被毛などにも同時に効果が表れ副作用はなく安心できるものになります。

☆オーラルガード(犬、猫)

口臭が気になるけれど口を触らせてくれない、または積極的なデンタルケアに自信がない飼い主さん向きです。歯周病菌の分泌する酵素を抑制するグロビゲンPG(卵黄粉末由来)を主成分とし、口臭の原因を押さえるための乳酸菌、ラクトフェリン、カテキンが配合され、納豆のネバネバ成分と同じポリグルタミン酸で口の中に有効成分をとどまらせます。粉末なのでフードにふりかけて与えると投与しやすいです。オーラルガードの味を好む子は多く、ふりかけた方が喜んで食べ、食べ終わってからも器を舐めているというエピソードも聞かれます。投与後有効成分が口腔内にとどまるように与えてから15分くらいは飲水を控えてください。口臭の改善は約1週間程度、重度な子でも2週間くらいで効果が感じられます。2週間を過ぎても口臭改善効果が見られない子はオーラルガードでのそれ以上の改善は望めないと判断します。猫の口内炎の痛みの改善にも効果があるようです。卵、ポーク、チキンにアレルギーがある子は使えません。

☆Pero One(ペロワン)(犬、猫)

口臭が気になる犬猫向けのペースト状(とろりとした液体状)のサプリメントです。有効成分はグロビゲンPG、乳酸菌(KT-11)、ラクトフェリンです。甘みがあるので喜んで舐めてくれることが多いです。歯みがき後のご褒美として舐めさせるのも良いでしょう。猫の口内炎のコントロールにも有効です。

☆プロバイオサイエンスPET(犬、猫)

口の中にすむ善玉菌を補って悪玉菌(歯周病菌)を住みにくくし、歯垢、バイオフィルム、舌苔などを抑制して口腔内の良好な環境を保ちます。錠剤になります。

☆t/d(犬、猫)

とても大粒で線維に富んだフードです。犬用は大粒、小粒の2つのサイズがあります。大型で砕けにくく、噛む時に線維が歯をこすりながら歯垢を落としていきます。低カロリーの総合栄養食なので毎日の主食にすることもできます。スケーリング処置後に100%t/dで管理するとかなりの歯垢、歯石付着防止効果がありますが、おやつとして与えるだけでも効果があります。スケーリングを実施していない例でもそれなりの効果がみられ、飼い主さんから「口臭が減った」との声も聞かれます。独特な食感を好む動物もいるようです。

☆インターベリーα(犬)

インターフェロンαを産生する遺伝子組み換えイチゴの果実を原料とした犬の歯肉炎軽減剤です。神経細胞や免疫担当細胞に働き良好な免疫バランスを保ち、歯周病菌を減らして歯肉炎を軽減する作用があります。出血が無く歯肉が腫れている程度の軽度の歯肉炎には極めて良好な改善が期待できます。スケーリング後の歯肉のケアにも良いです。粉末タイプなので1回分を小皿にとりぬらした指でペースト状に錬り、歯肉全体にマッサージするように塗りこみます。3~4日に1回の間隔で合計10回の投与を行います。歯肉を触らせることができる犬が対象になります。

☆リーバスリー(犬、猫)

口腔内に直接スプレーもしくはスポイトで滴下することで口腔内環境を整え歯と歯肉の健康を保持することを目的としたものです。口腔内のPHも整え歯石が緩みやすくなり取れることもあります。使用前後の30分は食事と水を控えます。アルコールが含まれています。効果には個体差がある印象があります。

☆K-ブラッシュ(犬、猫)

口腔内に直接スプレーし(1日2回左右1スプレーずつ、大型犬は2倍量)プラークや歯石の沈着予防、口臭中和、悪玉菌の増殖抑制、歯肉炎・歯周病の予防を目的とします。100%天然成分由来(国産ホタテ貝殻焼成カルシウム(水酸化カルシウム)使用)、強アルカリ性(pH12)、アルコール不使用で甘みがあります。劇的な改善は期待できませんが毎日ケアさせる子であればゆっくりと効果が出るようです。

☆オーラストリップ(犬)

口の中の液体成分(歯肉溝浸出液や唾液)に含まれる口腔内悪玉菌(歯周病菌)の代謝物質であり、口臭の原因の1つである「チオール」という物質を検出します。スティック状の試験紙で犬の上顎の歯肉縁(歯の上の歯肉の際)を(できれば)1周穏やかに滑らせて浸出液をしみこませて10秒後(採取後10秒から5分以内)に試験紙の褐色を判定サンプルと比色し、5段階で評価します。オーラストリップでチェックすることで口腔内悪玉菌(歯周病菌)の活動状況を知ることができます。口の中を触らせる犬であれば定期的に自宅で口腔衛生状態を自宅でモニタリングできます。

 
犬、猫の性格、年齢、健康状態、口腔内の現状、家庭でのデンタルケアのマスターレベルに応じたケアを始めましょう。デンタルケア用品はいろいろ工夫された新製品が次々開発されていますので、詳しくはスタッフにお問い合わせください。

 

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