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日野市石田・あおい動物病院

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ちょっと詳しく

スキンケア②

スキンケアというと、人間の世界での美しい肌を保つために女性を中心に化粧水、乳液、美容液、パックなどの基礎化粧品を使って、乾燥や美肌、アンチエイジングのためのものであり、フサフサの被毛におおわれた動物達には縁のない世界・・・というイメージはありませんか?健康な肌は人間でも過剰なお手入れは無用ですが、トラブルを感じる肌だと、あの手この手のお手入れが必要になります。それは動物においても同じことなのです。

今回は皮膚のトラブルの多い犬について述べていきたいと思います。人間の皮膚の生まれ変わり(ターンオーバー)は約28日といわれていますが、犬では約20~22日(約3週間)で、健康な皮膚の場合生まれ変わって落ちるフケ(落屑)はほとんどめだちません。皮膚の一番外側の角質層は「バリアー層」として働き、乾燥防止や細菌などからの防御の役割をしています。

しかし、犬に肌トラブル(乾燥、細菌・真菌・酵母菌感染、寄生虫、アレルギー、膿皮症、脂漏症など)があると正常なターンオーバーのサイクルがくずれ、3~7日(約1週間)と短くなってしまいます。それによってフケの量が増える・・・という現象が見られるようになります。肌としては、アレルギー物質や病原体を振り落とそうとターンオーバーを早めるのですが、もともと人間よりも表皮が薄い(人間の1/5~1/6程度。赤ちゃんよりも薄いのです)犬には、バリアー層にある角質を落としてしまうことは、さらなる防御機能の低下となり、皮膚のトラブルは悪循環に陥ってしまいます。

健康な皮膚は、角質層がきれいに並び水分と健全な脂分が含まれ、それをセラミドがつないでいます(セラミドは水と脂の両方を捕まえる性質を持っています)。角質の並びがくずれたりセラミドの量が少ないと水分を捕まえられずに乾燥したり、脂分が変性して不健全な脂となって漏れ出したり、さらに皮膚を荒らします。荒れた肌は独特の臭気を放ちます(変性した皮脂やアポクリン汗腺の臭いなど)。アトピー体質の犬達は、生まれつき角質層の並びがくずれやすい、セラミドの量が少ないなどの特徴を持っているため、常に肌は荒れてバリアー機能がうまく働かず、感染しやすかったり、痒みに悩まされたりします。何とかしてあげたいですね。

 

シャンプー療法について

犬にシャンプーをするのは大きく分けて2つの目的があります。1つは、健康な皮膚の犬の美容のために、清潔で美しい毛並みを保つためのものです。もう1つは、皮膚にトラブルのある犬に対し、治療としていらないものを洗い流したり足りないものを補ったりするためのものです。健康な皮膚の犬は正しいシャンプー方法(後述します)を守れば、洗い上がり、香りなどの好みで選んでもらってよいと思います(美容用のシャンプーでもフケ、痒み、敏感肌、保湿、犬種、毛色などに考慮されたものも多数出回っています。この場合のフケ、痒みなどは予防的なものと考えてください)。美容目的のシャンプーは、いわば「ヘアケア」を目的とするものといえるでしょう。

一方、薬用シャンプーは現に皮膚トラブルを抱えている犬のためのものであり、「スキンケア」を目的としたものといえます。イメージとしては「全身に外用薬を塗って一定時間反応させて余計なものを取り除き、不足しているものを補う作用」と考えてもらうとよいと思います。具体的に薬用シャンプーを使って取り除くことが期待できるものは、病原体、角質、痒み、フケ、かさぶた、過剰な皮脂、ワックス状の皮脂などであり、補うことが期待できるものは、水分や水分と脂分をむすびつけるセラミドなどです。

薬用シャンプーも数え切れないほどの種類がありますが、大きく分けて抗菌性シャンプー(細菌や酵母菌の増殖による膿皮症やマラセチア皮膚炎による皮膚トラブルを減少させることを目的とする)、角質溶解シャンプー(角質層の過剰な増殖による皮膚トラブル、荒れた皮膚やフケ、過剰な皮脂を取り去ることを目的とする)、保湿性シャンプー(角質層のつくりの弱さによる皮膚トラブルを防止し、乾燥している肌に潤いを与え、フケをおさえることを目的とする)、止痒性シャンプー(痒みを抑え、痒みによる皮膚トラブルを緩和することを目的とする。心因性の舐性皮膚炎にもちいることもある)の4つに分けられます。各シャンプーはそれぞれ特徴があり、使用が推奨されるシャンプーは個々のケースや治療段階によって異なります。動物の体質により刺激が強くて合わなかったり、動物の種類(猫など)によっては使えないものがあったり、使用回数制限があるシャンプーもありますので、使用に際しては獣医師のアドバイスが必要でしょう。

また、アトピー性皮膚炎の場合、生まれつき角質層のつくりが弱いので肌トラブルを起こしやすいうえ、環境中のアレルゲンや皮膚にいる細菌、酵母菌にアレルギー反応を起こしているケースもあります。アレルゲンを取り去るためのシャンプーはその意味でも重要です。皮膚トラブルには内服薬も使用しますが、皮膚は全身のなかでも薬の成分の届きにくい部位であり、内服薬で内側から、シャンプーで外側からのケアが有効とされています。内服薬の量や種類を減らすためにも薬用シャンプーは強い味方となります。

 

シャンプーの方法について

なんとなくシャンプーをするのと、正しい方法でシャンプーを実施するのでは効果に雲泥の差が出ます。もう一度シャンプーのやり方を再確認してみてください。

 

  • 犬の被毛を目の荒いコーム(くし)で全体的にサッととかし、抜け毛や毛玉をとっておく(スリッカーやブラシでガリガリとかしてはいけません)。
  • 25~30℃くらいのぬるめの水5分以上かけて毛の根元から皮膚まで充分にぬらす(薬用シャンプーの効果を充分に発揮させるためには、角質がしっかり水になじんでいることが重要です)。シャワーヘッドを体に密着させて水を掛けると水流の刺激や音も少なく、水を怖がらずに体を濡らすことができます。
  • 薬用シャンプーを全身の皮膚に付着するようによくなじませ、10分以上置く(症状のひどい所から洗いはじめる。シャンプーの成分がしっかり角質に作用するためには充分な時間が必要です。全身に塗り薬を塗り、水で軟らかくなった角質に薬用シャンプーを浸透させるイメージです。日常使う軟膏などの外用薬も塗ってすぐ舐めとってしまえば充分な効果が期待できないのと同様、シャンプーも皮膚に密着している時間が重要です。お勧めはタイマーで時間を計ってください。かさぶたがある時やワックス状の皮脂がある時は時間をかけて優しくかさぶたを取り除いたり、シャンプー前に皮脂をオイルとなじませきれいに取り除いたりしてください。しわの溝の部分も丁寧に洗いますが、趾間や肉球は特に優しく洗って下さい。また、短毛種はシャンプーの時強くこすらず毛の流れに沿ってシャンプーをなじませてください。毛並みに逆らって強い力でシャンプーをすると毛包炎をおこすことがあります)。
  • シャンプー剤を5分くらいかけてしっかりとすすぐ(すすぎ残しはシャンプー後のトラブルのもとです。顔に水がかかるのを嫌がる犬は給水スポンジを利用し、それを顔の上でしぼりながらすすぎ洗いを行うのもよいです)。必要により、シャンプー後にコンディショナーを使用することもあります。
  • しっかり水気をしぼり、タオルドライをします(皮膚に炎症があったり痒みのある犬はゴシゴシこすりすぎないように)。
  • 自然乾燥(痒みや炎症のある犬はドライヤーの風や熱も刺激になることがあります。ドライヤー乾燥より少し毛がゴワゴワしてしまいますが、自然乾燥も1つの方法です)もしくはドライヤーで乾かす(ドライヤーで乾かす時は、冷風もしくは送風口を体から30cm以上離して温風を使用します。乾いたタオルの上からドライヤーをかけると吸水したタオルが常に乾くので肌を守りながら効率よく乾かすことができます)。

 

シャンプー後に肌が乾燥している時は、コンディショナーや保湿剤を使用します。シャンプー後の濡れた体に水に溶いてかけるタイプや、乾いた体にスプレーやムースで日常的に使用できるものもあります。美容シャンプーの場合も③以外は同様に考えて②~④までは10~15分以内で行うようにしてみてください。

病院から飼い主さんにお願いする薬用シャンプーを使用するシャンプー療法(薬浴)は本当にとても大変ですよね。なかには協力的でない犬もいますし、薬浴中にブルブルをして飼い主さんまでもが泡だらけ、びしょ濡れになって悲しくなってしまうこともありますね。せっかく薬用シャンプーでのシャンプー療法を行うのであればぜひ、正しい方法で実施してください。大変なことは重々承知しておりますが、頑張った分だけ効果はあらわれるはずです。

シャンプーだけで皮膚のトラブルを100%コントロールすることはできません。アトピーのように一生付き合っていかなければならないものもあります。うまくいかない時、思ったほど効果が感じられない時、心が折れそうになった時はご相談ください。「シャンプー(Shampoo)」とは、もともとヒンディー語で「マッサージする」という意味の単語からきているといわれています。薬用シャンプーは美容シャンプーの「洗う」目的よりそちらに近いかもしれませんね。ぜひ、愛犬をマッサージするようなつもりで薬用シャンプーによるスキンケアを実施してください。

 

 

参考文献:DERMATOLOGY 2010July Vol.1 No.4 特集 シャンプー療法アップデート

その有用性を存分に引き出す!

CLINIC NOTE 2011Aug No73 特集 シャンプー療法はもっと活かせるはず!

~正しい使い方と継続が導くその効果~

フィラリア予防薬の投薬期間

1.春から秋に予防薬を投与する場合

近年の東京のフィラリア感染期間は、10年間(1997~2006年のデータ)の平均で5月14日~11月4日ごろと言われております(最も早い感染時期は5月5日、最も遅い感染時期は11月10日)。(参考:第10回日本犬糸状虫研究会 2007年発表資料)
これらのデータは、1日平均気温が14℃以上になる時を感染期間とし、気象台の気温データに基づいて算出されております。ただし、蚊の発生は、生活圏の気温や蚊の分布の差などによって地域差があるため注意が必要です。日野市内でもグッピーが冬越しできるような暖かい水が1年中あったり、地球温暖化の影響もあるので、上記感染期間(5/14~11/4)はあくまでも最低限の危険期間ととらえて、各家庭に合った予防期間を考える必要がありそうです。
また、予防薬がフィラリア駆虫に有効なのは、犬が蚊に刺され、子虫を置いていってから約2週間後(子虫が成長した時点)の投薬ですので、投薬期間の最終は11月中旬以降になることが望ましいです。

 

2.通年予防の場合

近年の温暖化や住環境の良質化により、フィラリア予防期間の確定が難しくなっています。そのような場合、1年を通して毎月1回フィラリア予防薬の投薬を続けるという方法もあります。当院で処方しているフィラリア予防薬は、フィラリアのほかにも消化管に寄生する回虫、鉤虫(一部鞭虫も)等も併せて駆虫する効果があります。
予防薬は2日程で体から完全に排泄されるので、通年投与となっても犬の健康に問題を与えることはありません。
かつて犬の飼育の主流が屋外だったころに比べ、室内飼育が増え、住空間、食卓周り、ソファー(時にはベッドも)等も共有するケースが増えてきていますので、定期的な消化管内寄生虫の駆除は、人獣共通に感染する寄生虫を寄せ付けないというメリットもあります。
また、通年予防の場合は、春先の血液検査をせずに投薬を継続することができますので、検査のためにお待たせすることもなくなります。もちろんご希望であれば1年を通してフィラリア感染の血液検査やフィラリア症を含めた一般的な血液検査は実施可能ですので、お気軽にご相談ください。

 

愛犬とその家族にとって、フィラリア症の予防はとても大切なことです。ご家族のライフスタイルに合った投薬方法をご検討ください。ご不明な点は何でもお問い合わせください。

スキンケア①

皮膚の構造は、人も動物も外側から順に「表皮」、「真皮」、「皮下組織」の3層からできています。また、皮膚には被毛が生え、被毛を作る毛球、汗腺、皮脂線などが分布しています。このような構造を持つ皮膚ですが、人と動物では異なる特徴も見られます。以下に人と犬とを例にとって、少し詳しく述べてみたいと思います。

 

皮膚の構造

人は、特に女性を中心として、お肌の手入れに余念がありません。しみ、しわ、くすみ、たるみ、乾燥、べたつき、ニキビ、敏感肌・・・。数々の肌トラブルに対して、あの手この手で対策を立てています。お店にもスキンケア用品はずらりと並び、華やかなCM、雑誌の特集、通販番組などで情報はあふれかえっています。女性に限らず、皮膚の薄い赤ちゃん用や、メンズケア用品もたくさんあります。スキンケアに無頓着な人でも、毎日洗顔し、よく水分をふき取るくらいのことはしていることかと思います。丈夫な毛におおわれていないむき出しの皮膚はとても無防備な存在に感じます。

それに対して犬達は、フサフサの被毛に覆われ、暑い日も寒い日も元気に飛び回り、飼い主さんたちが散歩をサボりたくなるような雨、風、雪の日でも、わが身ひとつで喜び勇んで外に繰り出し(しかも裸足で!)、おまけに、しみ、しわ、たるみ等の心配もなくうらやましいほどです。(もちろん、寒さ対策で服を着たり、お天気の良い日以外の散歩を好まない犬達もたくさんいますが・・・。)とても頑丈で良質のコートをまとい、無敵のバリアにおおわれているような印象さえ受けます。はたして、犬達の皮膚は人間に比べて、どれくらい丈夫なものなのでしょうか?

皮膚の構造を見てみると、大きく分けて、外側から順に「表皮」、「真皮」、「皮下組織」の3層でできているのは、前に述べた通りです。ところが犬達は、豊かな「被毛」で外部から身を守ったり、保温したりはしていますが、「表皮」だけについて比べてみると人の1/5~1/6程度の厚さしかありません。「表皮」の一番外側は「角質細胞層」と呼ばれるところで、外からの刺激、乾燥、紫外線によるダメージ等から体を守っています。そのため、「表皮」の薄い犬達は思いのほか、人に比べてダメージに対してトラブルを起こしやすいといえます。

また、人の正常の皮膚は弱酸性(pH5.5くらい)ですが、犬は弱アルカリ性(pH7.5くらい)です。雑菌類は酸性の環境よりもアルカリ性の環境の方が増殖しやすいので、この点からも犬は人に比べて、細菌性皮膚炎等のトラブルを起こしやすいとも言えます。

また、人と犬とでは皮膚に存在する「汗腺」の分布にも違いが見られます。「汗腺」には、「エクリン汗腺」と「アポクリン汗腺」の2種類があります。人のほぼ全身には「エクリン汗腺」が分布しており、私達が暑い時や運動した時にかく「汗」を分泌します。それに対して犬は「エクリン汗腺」は足の裏の肉球にしかありません。そのため、暑い時や運動した時にはハアハアとパンティングをして、唾液を蒸発させ、体温の調節を行っています。

もう1種類の「アポクリン汗腺」は、人では、わきの下などの一部にしかありませんが、犬では全身に分布しています。この「汗腺」は脂肪分の多い、ベタッとした汗を分泌します。この汗が酸化したり、細菌よって分解されたりすると異臭を放つようになります。『犬臭い』のもこの臭いです。

 

皮膚の生まれ変わり・・・角質細胞層について

人も犬も皮膚は一定の周期で新しく生まれ変わっています。皮膚の一番外側の層である「表皮」は、外部からの刺激から内部を守っていますが、そこで重要な働きをするのは「表皮」の最外層の「角質細胞層」とその間に存在する「細胞間脂質」です。この「角質細胞層」は、表皮の最下層の「基底層」で作られた細胞が、分裂・分化・成熟しながら上の層へと移っていき、一番外側にある「角質細胞層」まで移動してくると、「フケ」となって脱落します。この時、病原微生物やアレルゲンなどを物理的に除去する役割も果たします。この過程をターンオーバーといい、健康なひとでは、ほぼ28日サイクル、健康な犬の場合では約20~22日サイクルであるといわれています。また、脂漏症等の犬ではターンオーバーが3~5日、膿皮症の犬では5~7日と、極端に短くなっていることもあります。健康な犬のフケはごく細かいもので、目立つものではありませんが、脂漏症や感染性の皮膚疾患、アレルギー性皮膚疾患等のときには、大きく目立ったフケがたくさん見られることがあります。いつもは目立たないのに冬場だけカサカサの細かいフケが増えるときは乾燥が原因のこともあります。加湿して良くなることもあるので試してみてください。また、緊張した時に急にフケが湧き出てくる時もあります。ゾーっとして立毛筋が毛を逆立たせ、一時的に「角質細胞層」がまとめて浮き上がって出てきたものです。病気に関係したフケでは、犬種、大きさ、色、におい、形、乾燥性か脂性か、伴う病変はどんなものか、基礎疾患は何か等によって判断しますので、「このフケは何?」と思ったらご相談ください。

 

皮膚のバリア機能・・・細胞間脂質について

表皮の最外層は前に述べたように「角質細胞層」とその間を埋めるように存在する「細胞間脂質」、それと「結合水」によって構成されています。このうち「細胞間脂質」は主に「セラミド」、「遊離脂肪酸」、「コレステロール」、「コレステロールエステル」等によって構成されています。これらの「細胞間脂質」は、『親水基(水になじむ部分)』と『親油基(あぶらになじむ部分)』からできており、「角質細胞」を取り囲むような層状の構造をとっています。この「細胞間脂質」は「セラミド」が、他の「細胞間脂質」とともに『親水基』と『親油基』を規則的に配列させることによって水分を結合させ、水分を保持することを可能にしています。この結合水が、皮膚の保湿を担っています。(親水基+親油基…親油基+親水基…結合水…親水基+親油基…親油基+親水基…結合水…親水基+親油基・・・といった脂質二重層という層状構造をしています。)他に「細胞間脂質」は、脂質二重層の柔軟性や硬直性、細胞間の結合や剥離(コレステロールの役割)、外部刺激やの異物の皮膚への侵入を防ぐバリア機能にも関与しています。

「細胞間脂質」の正常なバリア機能が働いている時には、花粉、ハウスダスト、ダニ、カビ等のアレルゲン、異物、細菌などが侵入できないようにガードできますが、バリア機能が低下している時(「セラミド」の減少など)は、アレルゲンなどの異物や細菌などの微生物が容易に侵入してしまうようになります。(堤防が決壊すれば川の水がどんどん町に流れ込んできてしまうようなものです。)そのため、『ダメージによる表皮の破壊→抗原(アレルゲンや細菌など)の侵入→炎症や痒み→引っ掻き等によるさらなる表皮の破壊→・・・』という悪循環が繰り返されてしまうことになります。また同時に脂質二重層の破綻により水分の保持機能も低下してくるため皮膚は乾燥し、刺激に対してより過敏になります。

そして「角質細胞層」のターンオーバーの乱れや、「細胞間脂質」の減少等の不具合によりバリア機能が低下した皮膚では、アレルゲンや微生物などの侵入増加・水分の喪失・犬が引っ掻く、かじるなどの物理的ダメージを与えることに加えて、「ケラチノサイト」(「表皮」の「角質細胞層」を構成する「角化細胞」のこと)によって細胞同士が情報を伝達しあう物質が誘導され(サイトカインネットワーク)、さらなる炎症を引き起こし、ますます皮膚のダメージが憎悪していくという負のスパイラルに陥るのです。このようなメカニズムによって、皮膚疾患は悪化・再発・慢性化・難治化しやすくなってしまうのです。(犬アトピー性皮膚炎などのアレルギー性皮膚炎・脂漏症・膿皮症等で顕著に見られますので、今までいっぱい頭を悩まされてきた飼い主さんもたくさんいらっしゃいますよね。)

これらの皮膚の正常な成り立ち、および皮膚疾患におけるメカニズムは複雑な仕組みですが、それぞれが一連のものとして絡み合っているということはイメージしていただけたでしょうか。

 

皮膚にダメージを与える病気

一口に『犬の皮膚病』といっても、本を開けばざっと300種類以上もあります。でも、飼い主さんたちがよく悩まされる代表的な皮膚病は次にあげるようなものが多いことでしょう。これらの病気は単独のこともありますが、合併しているケースも大変多くみられます。聞いたことがある病名はありますか?

 

●アレルギー性皮膚炎、犬アトピー性皮膚炎

接触、食べ物、ノミの寄生、環境中のアレルゲン等に反応して皮膚炎を起こしたもの。犬達は、引っ掻いたり咬んだり、こすったりでとてもかゆがります。毛が抜けたり、皮膚も真っ赤になったり、経過が長いと色素沈着(皮膚が黒ずんでくる)や分厚くなったりします。重度の犬アトピー性皮膚炎では見た目もボロボロになってしまいます。アレルギー検査による原因の特定、原因物質の除去、投薬を中心として各種のスキンケア(後述)を組み合わせて治療しますが、コントロールが難しい症例もあります。

 

●疥癬(ヒゼンダニ)、アカラス(イヌニキビダニ・毛包虫)

皮膚の内部に寄生するダニによる寄生虫感染症です。犬疥癬はとても痒みが強く時に人にも感染します。皮膚の表層にトンネルを掘ってダニが活動しますが、散歩の時に寄生してくるマダニとは異なり、肉眼では見えません。犬同士の接触やタオルの共有等から感染することもあります。アカラスは正常な犬の毛包にも若干数寄生しているとされるダニですが、このダニも肉眼では見えませんが、異常増殖してしまった時に症状が現れます。症例により痒みは様々ですが、局所型と全身型に分かれます。子犬の時の局所的な感染では成長とともに抵抗力がつくに従って治ってしまうことも多いのですが、全身性のアカラスは、きわめて重篤となります。重症化するものの多くは、遺伝性や、免疫や抵抗力低下時等で、二次感染によるその他の感染症と合併することが多く、死亡することもあります。病変部からのダニの検出と駆虫薬を使っての治療を行いますが、犬種によっては使えない薬があり、また犬の基礎疾患によって治療が難しい場合もあります。

 

●膿皮症

細菌の感染による化膿性の皮膚炎です。犬は人よりも皮膚の細菌感染に対して弱いところがあります(前述)。ポツポツができたり、皮がむけたり、かさぶたができたり、ベタベタしたり状況によりいろいろですが、痒みを伴います。皮膚に正常で存在するブドウ球菌が原因になることが多いのですが、そのほかの菌が原因になることもあります。正常では病原性がそれほど強くないブドウ球菌が皮膚についていることによって、そのほかの不都合な菌が増えないようにうまくバランスが取れているのですが、バリア機能の破綻、掻き壊しや、その他の基礎疾患などによって菌との共存がうまくいかなくなると膿皮症を起こしてしまいます。ターンオーバーを考慮した長期的な抗生物質の投与とシャンプーの併用が治療の中心となります。抗生物質も耐性を持つ菌が出てきているため、指示通り与えていただくことが大切になります。

 

●マラセチア(酵母様真菌)皮膚炎、皮膚糸状菌症

どちらも真菌による感染症ですが、症状は全く異なります。

マラセチアは、本来正常な皮膚に住み着いている真菌で、程良く皮膚に分布していることによって、その他の真菌による感染が起きにくいように共生しています。マラセチア皮膚炎は、マラセチアが正常な量より異常増殖してしまった時に起こります。好発部位は、わきの下、内股、首の下、耳、口元、顔のしわなどの擦れて暖かく、脂っぽいところです。強いかゆみと、独特の臭気を伴います。外耳炎では、ねっとりとした茶色い耳垢が出ます。皮膚は真っ赤になって、犬は必死で掻こうとします。マラセチアは、あぶら分を大変に好みますので、皮脂の分泌の多い犬種で悩まされることが多いようです。皮膚検査によってマラセチアを検出し、薬用シャンプーでマラセチアや、その他の雑菌類や皮脂を落とし、症状によっては抗真菌剤を併用します。皮脂の分泌の多い犬種や、犬アトピー性皮膚炎の既往のある犬で繰り返す傾向があります。

皮膚糸状菌症は単独ではあまりかゆくないようですが、脱毛を伴います。抗真菌剤と薬用シャンプーの併用で治療しますが、基礎疾患により治りにくい症例もあります。

 

●脂漏症

異常な皮脂の分泌とフケを伴う慢性の皮膚疾患です。乾燥性脂漏(乾燥して大きなフケがたくさんでる)、油性脂漏(脂っぽい皮膚、被毛)と脂漏性皮膚炎とに分けられます。脂漏性皮膚炎は、角化異常を伴うターンオーバーの乱れにより、フケが大量に発生します。フケのほかにも、赤くなったり痒み、脱毛、かさぶたを伴います。内分泌の異常や遺伝が背景にあるとも考えられ、マラセチア皮膚炎との合併が見られます。薬用シャンプーによる脱脂、角質溶解で、フケやかさぶたの除去、雑菌類の減少を試みます。ステロイドの投薬や、マラセチア皮膚炎のコントロール、ビタミン剤、サプリメントの使用などで軽減を図ります。

 

●内分泌疾患

犬に比較的多くみられ、皮膚症状を伴う内分泌疾患に、甲状腺機能低下症と副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)があります。どちらも、左右対称性もしくはび慢性の痒みを伴わない体幹部の脱毛(頭と四肢を残した脱毛)と色素沈着を伴います。但し、二次感染により、痒みを伴う皮膚疾患を合併することも多いです。

甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの分泌低下により発症します。特徴的にみられる症状としては、鼻すじや尾の脱毛と色素沈着、無気力、食欲の増加を伴わない体重の増加、寒がる、心拍数の減少、フケ、乾燥して抜けやすい艶のない被毛、外耳炎や膿皮症にかかりやすいなどのうちいくつかが見られます。血液検査、臨床症状を併せて診断します。

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)は、脳下垂体性(腫瘍によるものが多い)副腎原発性(副腎の過形成)、医原性(ステロイドホルモン剤の長期投与による副作用)があります。コルチゾルというホルモンの過剰分泌によって発症します。特徴的にみられる症状としては、多飲、多尿、過食、筋力・筋肉量の低下、太鼓腹、薄くてしわのよる皮膚、皮膚病にかかりやすい(細菌性、寄生虫性)等です。血液検査、臨床症状を併せて診断しますが、治療薬も高価であり、飼い主さんにとっても、犬にとっても辛い病気です。

皮膚疾患は、「一度直してしまえばもう大丈夫。」というものと、「だましだましコントロールしてあわよくば日常のケアでおとなしくさせる。」ものと、「必死で戦い続ける」ものがあります。皮膚や病気の特徴を知って、有効なスキンケア・スキンコントロールのお手伝いができたらと思っています。また、皮膚病は上に書いたものだけではありませんし、犬種、ライフスタイル、犬の年齢、食べ物、体質等によってもそれぞれ異なります。それぞれのケースのあった治療計画を立てる必要がありますので、ご相談ください。

災害時にそなえて

2011年3月11日、私たちは「東日本大震災」という未曽有の大災害を経験しました。直接、大地震や津波の被害に遭われた方々、原発事故で今なお辛い思いをされている方々、被災地に家族や友人・知人がいてとても心配された方々など、本当にたくさんの人々が恐ろしく辛い思いをしました。心からお見舞い申し上げます。

当動物病院のある東京都も交通の麻痺、ままならない家族の安否確認などやはり大混乱でした。マスコミでは専門家によって、また近い将来大きな地震が起きる可能性が高いことが指摘され、皆の防災に対する意識も高まっています。
また、その後も各地で大地震や水害などの自然災害が相次いでいます。災害は自然災害だけとは限りませんので防災意識は常に高めていたいものです。
災害が発生したら、まずは自分や家族の身を守ること。そして自分たちだけでは何もすることができない愛犬・愛猫をはじめとしたペットの身を守ることが大切です。
では、動物たちのためにはどのような備えが必要なのでしょうか。

日ごろのしつけ・そなえ

災害時には、人間だけでなく動物たちもパニックになります。驚いてどこかに飛び出していくのを防止し、安全に一緒に連れて避難するために日ごろから首輪やリード、ハーネス、ケージに慣らしておきましょう。猫は身を隠せる狭い場所に入るほうが安心する傾向が強いので、ケージに入れば比較的良い子にしていられますが、犬は子供のころから慣れていないとケージに入れることによって、吠えて吠えて大騒ぎになるかもしれません。「ケージは安全で良いところなんだよ!」と小さいころから慣れさせておいてください。普段でも旅行や病院に行く時、来客のある時など、ケージを上手に使いこなせるようなると、飼い主さんの快適度も増します。
避難時、状況によっては動物にアレルギーがある人、動物が苦手な人と一緒に過ごすことがあるかもしれません。ケージレストは最低限のマナーであり、動物と人間の避難場所が異なる場合でも、動物本人が慣れ親しんだケージは必需品です。また、予期せぬ状況で、動物とはぐれてしまうことがないとも限りません。首輪の内側に飼い主の名前や連絡先を記入して常に身につけさせたり、犬の場合は犬鑑札や狂犬病予防注射済票をしっかりと身につけておきましょう。今は動物の体(皮下)に埋め込み、飼い主の情報を専用リーダーで読み取ることができる「マイクロチップ」というものもあります。しっかり安全性も確立され、首輪がとれたり動物と遠くはぐれてしまうような事態が起きても、飼い主さんと動物を1対1で結びつけてくれるとても有効な手段です。動物病院で埋め込み、装着処置ができますので、興味のある方はご相談ください。

非常時に備え準備しておくもの(チェック表を作り、ケージに貼り付けておくとよいでしょう)

○ケージ、首輪、ハーネス、リードなど
ケージは動物本人の慣れているものが理想。首輪、ハーネス、リードは、一度使ってみてつけ方、つけ具合を確認し、大きすぎたり小さすぎたりしないか確かめておくこと。もちろん記名も忘れずに。

 

○3日分以上(特に処方食の子は5日分以上)のフード、水、食器
フードは必要分をペットボトルやタッパーウエア、透明なボトル等の容器に入れて用意しておくと便利でしょう。ラベルもしくは容器にマジックで「動物の呼び名、フードの銘柄、給与量、回数」などを記入しておくと、万一動物の世話を人に頼むようなときに助けになります。給与量一回分ずつのところに線を引いておくのも分かりやすいでしょう。
例えば、新しいフードを購入したらまず非常持ち出し用の容器に必要分をとりわけてストックし、前回分のストックしておいたフードを使い切ってから新しく購入したフードを使う・・・というように非常時用のフードが古くならないように毎回入れ替えていくのも良いでしょう。食器はフード用と水用の2つ。どちらも記名しておきましょう。

 

○うんち袋、トイレ砂、ペットシーツ、ゴミ袋、ウェットティッシュ、ティッシュ、消臭剤等
使い慣れたもの。うんち袋、ペットシーツ、ゴミ袋は少し多めに。

 

○いつも飲んでいる薬、予防薬
非常時に備えておくものではありませんが、避難する時は忘れずに持ち出せるよう、家族みんなでしまってある場所はわかるようにしておきましょう。そして忘れずに持ち出しましょう。

 

○ワクチン等の記録のコピー
動物たちも状況によっては集団生活になることもあります。自分の動物の健康を守るため、日頃から計画的にワクチン接種を実施しましょう。他の動物に病気を広げない為のマナーでもあります。またいつもと違う状況に動物がパニックを起こし、咬傷事故を起こしてしまうことも考えられます。犬は一生に一回の登録と年一回の狂犬病予防注射をうけさせてください。(狂犬病予防法という法律によって義務づけられています。登録を行わない人、犬鑑札を犬の身につけさせていない人、狂犬病予防注射を受けさせていない人、狂犬病予防注射済票を犬の身につけさせていない人はそれぞれ20万円以下の罰金となることがあります)また、万一咬傷事故を起こしてしまった場合には、条例により咬んだ犬の飼い主は24時間以内に、動物愛護相談センター多摩支所(042-581-7435)に届け出なければいけません(東京都多摩地区の場合)。また、咬んだ犬の飼い主は事故後48時間以内に飼い犬を獣医師にみせ、狂犬病の検診を受けさせなければいけません。この時、前回の予防注射の実施が有効期限内かどうか等でその後の検診回数等の対応が変わります。狂犬病予防注射実施の証明書もしくはコピーを準備しておくとよいでしょう。もちろん狂犬病予防注射実施時に交付される注射済票も有効です。(これらのことは、非常時だけでなく普段の咬傷事故後の飼い主さんのとるべき手続きでも同じです)

 

○病歴、主治医、飲んでいる薬の内容等のメモ

 

○使い捨てカイロ、バスタオル、フェイスタオルな

 

○その他必要なもの
おもちゃ、おやつなど。ただし荷物が多すぎて持ち出せないのでは本末転倒なので最低限で!

 

今回、犬猫を中心に述べてみましたが、その他小鳥、フェレット、ウサギ、ハムスター他の動物たちもフード、床敷、トイレ、保温具(多め)など同様に考えてください。また、当院HPと併せて南多摩獣医師会HP(http://www.mvma.jp/も参考にしてください。

フィラリア予防薬で駆虫できる寄生虫

フィラリア予防薬で駆虫できる寄生虫と人への感染

(ミルベマイシンA・カルドメックチュアブル・イベルメック・ネクスガードスペクトラ)

 

1.犬糸状虫(フィラリア)

犬糸状虫(フィラリア)の感染には、蚊が重要な役割を持っています。

犬糸状虫感染犬

蚊が血液といっしょにミクロフィラリアをとりこむ

蚊の体内でミクロフィラリアが感染仔虫に成長する

蚊が他の犬を吸血した時に感染仔虫をおいていく

感染成立

犬糸状虫が心臓に寄生

犬糸状虫は、犬の心臓や肺動脈に寄生して犬に右心不全をひきおこし、それにともなって全身のうっ血から肝硬変、腎不全などをおこし、死に至らしめる寄生虫です。

感染した犬は、咳、運動を嫌がる、削痩、貧血などの症状が見られます。多くは慢性経過をとり、はっきりした症状を示さず徐々に衰弱していきますが、急に血色素尿や呼吸困難、虚脱を起こし、突然死をする急性型(大静脈症候群)に移行することもあります。

死亡率の高い感染症ですが、予防法が確立されているので『犬糸状虫感染期間』にもとづいた予防薬の確実な投与により、犬を犬糸状虫から守ることが可能です。予防薬は上記の『➪』の時に犬糸状虫を駆虫するものです。

犬糸状虫は犬のみではなく、猫やフェレット、その他野生動物も感染します。

 

人への感染:極めてまれです(偶発感染)。人の体内で成虫になることは少ないですが、肺の中で腫瘤(こぶ)をつくり、肺動脈の塞栓や血痰、胸の痛み、呼吸困難をひきおこすことがあります。また、ごくまれに皮下や腹腔にも腫瘤をつくることがあります。

 

2.回虫(犬回虫・猫回虫)

犬や猫の小腸内にミミズ状の虫が寄生し、小腸内の消化した食物を横取りして栄養源としています。回虫は10~18cmと大きいので、子犬に大量寄生すると消化吸収を妨げられて発育不良になったり、腸を詰まらせたりします。虫の刺激で腸に炎症が生じたり、腹痛、下痢、嘔吐(時に虫体を吐く)を起こしたりすることもあります。また、回虫は腸の中だけにとどまらず全身を移動するので、その時に呼吸器や肝臓に障害をあたえることもあります。

感染経路は4ルートあります。

  • 感染母犬の胎盤を通じて母犬から子犬へ(胎盤感染)
  • 感染母犬の乳汁をのむことで母犬から子犬へ(乳汁感染)
  • 環境中の感染能力のある虫卵を口から摂取する(経口感染)
  • 回虫を体内に持っているネズミや鳥などを食べて幼虫が動物の体内に入りこむ

経口感染のうち、生後2~3カ月の子犬の場合は、摂取された虫卵は小腸で孵化し、体のあちこちをめぐって2カ月ほどで成虫になり、小腸に戻ってきて産卵し、回虫卵を環境中にばらまきます。生後3カ月以上の子犬や成犬の場合は、摂取された回虫卵は小腸で孵化した後、全身の組織に分布してそこにとどまります。(妊娠すると胎盤をとおして子犬に移行していきます。)また、猫の場合は成猫になっても小腸に寄生して回虫卵を環境中にばらまき続けます。

 

人への感染:人は③か④のルートによって感染します。

③の経口感染の場合は、砂場や犬や猫の体や毛についた回虫卵が(動物に触った後や回虫卵が付着しているものに触った後)手に付着して口に入ったり、口もとに回虫卵をつけた犬に舐められたりすることなどにより感染します。回虫卵はベタベタした糊状の膜におおわれたくっつきやすい構造をしており、動物の肛門周り、口もと、足(お散歩でくっつけてくる)、抜け落ちた毛などに付着していることが多いです。

①のルートの場合は、鶏レバー(地鶏など)の生食(かつては牛レバ刺など)によって感染することが知られています。

犬回虫は人にも感染しますが、回虫にとって人は居心地が良くないので幼虫のまま体のあちこちを移行します(幼虫移行症)。ほとんどは肝臓で死滅しますが、まれに内臓や眼に入り込んで障害をおこします(重症の場合は失明します)。予防には動物の定期的な駆虫と、節度のある接し方が大切です。

 

3.鉤虫(犬鉤虫・猫鉤虫)

鉤虫は、1.5~2cmくらいの大きさで、3対の鋭い歯牙で腸粘膜に咬みついて寄生し、血液を吸い取って栄養源にしています。そのため犬は、血便(黒色便)や食欲不振、腹痛、失血による慢性の貧血をおこします。抵抗力の弱い子犬の場合は、激しい下痢や血便のために衰弱死することもあります。

感染経路は4ルートあります。

  • 胎盤感染
  • 乳汁感染
  • 経口感染(回虫とは異なり、環境中に排泄された.鉤虫卵が孵化して脱皮し、感染幼虫となったものを口から摂取してしまうことにより感染)
  • 経皮感染(感染幼虫が皮膚や毛穴から入りこむことにより感染)

人への感染:感染幼虫がまれに経皮感染し、皮膚炎やミミズ腫れ(皮下を虫が移動するためにおこる)をおこすことがあります。皮膚の下を虫がはいまわるので強いかゆみが出ます。

 

4.犬鞭虫

犬鞭虫は、盲腸の腸壁に頭をもぐりこませて血液や体液を吸引して寄生しています。そのため、犬に腸炎、下痢、軟便、血便、粘血便をひきおこします。子犬よりも成犬に多くみられる感染症です。少量寄生の時ははっきりした症状を示さず、時々血液の混ざった粘液便が出る程度のこともありますが、重度の場合、大腸性慢性下痢、タール状の血便などがみられたり、痩せたり毛並みが悪くなったりします。

鞭虫は、虫体の2/3は細くて後ろは太く鞭のような(根っこの長いもやしのような)形をしています。卵の状態で経口感染しますが、鞭虫卵は高温多湿を好み、抵抗力も強く、戸外の土中に5年以上生存することもあります。お散歩コースが(野生動物なども含めて)鞭虫卵に汚染されているときはとても危険です。

犬鞭虫は盲腸にもぐりこんでいる虫なので、前述の3つの寄生虫よりも駆虫には多くの薬を必要とするケースもあります。感染経路は経口感染のみです。

 

人への感染:感染力をもった卵を人が経口摂取してしまった場合、まれに腸管で成虫になるといわれています。

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