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日野市石田・あおい動物病院

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ちょっと詳しく

レプトスピラ症とは

2018年(平成30年)は、犬のレプトスピラ症発生について東京都内で2件の届出がありました。
1例目は昭島市でパピヨン(6月13日届出 10歳 オス)、2例目は武蔵野市でミニチュアダックスフンド(11月5日届出 10歳 オス、その後死亡)でした。

レプトスピラ症はズーノーシス(人獣共通感染症)であり、獣医師がレプトスピラ症の動物を発見したときは家畜伝染病予防法に基づき、都道府県に届け出なければならないことになっています(届出の対象となるのは7種類の血清型で、対象動物は牛、水牛、鹿、豚、いのしし、犬です)。

現在犬レプトスピラ症の届出の報告は西日本に多い傾向にはありますが全国的に発生が認められている病気です(不顕性感染や突然死、診断不十分などから届出に至らなかったものも含めると、届出数よりも多くの発生があることが考えられます)。
流行している地域では流行しているレプトスピラ症のタイプ(血清型)にあったレプトスピラ症のワクチンを犬に接種することが推奨されています。

2018年は都下でたて続けに2件の届出がなされたので今後私たちの住む日野市・国立市・府中市・立川市・多摩市・八王子市周辺もより注意が必要になってくるかもしれません。

レプトスピラ症とは、運動性のあるらせん状の細菌(スピロヘータ)で、病原性のあるものと病原性のないものの2種類に分類され、血清型(レプトスピラ症のタイプ)は250種類以上あります。
そのうち、国内でレプトスピラ症の原因となったものは14種類ほどだといわれています。感染の可能性があるのは人・犬・猫・家畜(牛・豚・馬など)・げっ歯類・野生動物・爬虫類・両生類など多くの動物(100種類以上)です。

レプトスピラは人や動物の体に入り込み、肝臓や腎臓で増殖し、尿とともに体外に排泄されます。そのような尿に汚染された水や土壌との接触によって皮膚の微細な傷や健康な粘膜から感染します。
けんかや性交・汚染された敷材・洪水や台風の後の泥水などからも感染することがあり、特にネズミは自身に害を与えずに病原体をまき散らす可能性のある要注意な動物となります。

犬のレプトスピラ症の潜伏期間は5日~2週間とされ、臨床症状から不顕性感染(感染しても症状は明らかに示さないもの)・出血型・黄疸型などがあります。
犬ではほとんどの場合が不顕性感染ですが(不顕性感染でも病原体は排泄します)、出血型は1~2日の発熱後に食欲不振・嘔吐・下痢・結膜充血・出血傾向などを示し、黄疸型は黄疸と血色素尿が見られ、出血型・黄疸型のいずれも甚急性あるいは亜急性、慢性の経過をとり死亡します。
甚急性のものは進行がはやいため腎不全や肝不全を認める前に、亜急性のものは肝疾患・腎疾患の複合的な症状がみられ腎不全により高確率で死亡します。
甚急性・亜急性のものから生存した少数の犬は慢性経過をとり、慢性の肝疾患・慢性の腎疾患により死亡します。

人に対する感染と予防についてですが、哺乳類に感染するレプトスピラの全てのタイプは人にも感染するものと考えられています。
感染している動物の尿・汚染した水・保菌動物には素手で触らないようにしてください。レプトスピラに汚染されている水や食物を口にすることによる経口感染にも注意が必要です。感染が流行している地域では流行しているレプトスピラのタイプ(血清型)にあったワクチンの接種が有効とされます。
日本国内だけでなく、東南アジアの一部のレプトスピラの流行地域では不用意に水に入らないこと、台風や洪水の後には特に注意が必要になります。
感染が疑われるときは速やかに医療機関を受診してください。

犬については、草むら・河川敷・堤防・農地や雑木林がお散歩コースに含まれていたり、川での水遊びや山遊び、またドッグランなど不特定多数の犬が集まるところに出入りする可能性のある場合は、レプトスピラ症の予防も含めたワクチンを接種したほうがよいと思われます。都市部のドブネズミによるレプトスピラの拡散について考えると一概に都市部だから安全ともいえないようです。
ただし、犬についても病原性のある全てのレプトスピラに対するワクチンがあるわけではないので、日頃から不用意な拾い食いやたまり水を飲ませないこと、不調が見られた場合速やかな動物病院への受診も大切です。
正しい情報と知識をきちんと持ったうえで、楽しい愛犬との生活を安全にお過ごしください。

ワクチン接種プログラムについて

犬や猫を飼われている方は愛犬や愛猫にワクチンを接種したことがあると思います。
ワクチンには大きく分けてコアワクチン(世界中で感染が認められる病気で、命にかかわる可能性があるため、できる限り全ての犬や猫が接種することが望ましいとされるワクチン)と、ノンコアワクチン(地域の環境や各個体のライフスタイルによって接種することが望ましいとされるワクチン)の2つがあります。
日本では犬のコアワクチンは、狂犬病(法律で1年に1回の接種が義務付けられています)・犬ジステンパー・犬パルボウイルス感染症・犬伝染性肝炎(犬アデノウイルス1型感染症)・犬伝染性喉頭気管炎(犬アデノウイルス2型感染症)の5つ、猫のコアワクチンは猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)・猫ウイルス性鼻気管炎・猫カリシウイルス感染症の3つがあります。
犬のノンコアワクチンは、犬パラインフルエンザ・レプトスピラ症など、猫のノンコアワクチンは猫白血病ウイルス感染症・猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)・クラミドフィラ フェリス感染症などがあります(犬コロナウイルス感染症のワクチンを積極的に接種するかどうかは意見の分かれるところです)。

個々の病気についての説明は今回は割愛しますが、ほとんどの犬や猫は母親の母乳から免疫をもらい(移行抗体)赤ちゃんの頃は母親から受け継いだ免疫に守られて過ごします(母犬・母猫がワクチン未接種などで免疫を持っていない場合にはもちろん子犬・子猫には受け継がれません)。また、母親から受け継いだ免疫が子犬・子猫から消失する時期には個体差があり、母親から受け継いだ免疫の量が多いとワクチンはそれにはねつけられて十分な効果を発揮できないため、初年度は複数回の接種が必要になります。
犬の場合、通常は1回目が生後6~8週後(母犬からの免疫が最も早く消失したケースを想定)、その後約1か月ごとに2回目、3回目を接種します。2回接種になるか3回接種になるかは子犬の最終ワクチンの接種時期が生後12週を超えたところ(ワクチンによっては生後16週を超えたところ)で、母犬からの移行抗体が完全消失し、自分の力で抗体を作り出せる時を初年度の最終とします。
その後6か月または1年後にワクチンのより確かな効果(ブースター効果)を得るために追加接種をします(ワクチンの免疫がついていない可能性のある犬や、環境、ワクチンの種類によってはさらに追加接種が必要な場合もあります)。
猫の場合は、生後9週令以上で1回目、2週間から1か月後までに2回目、ブースターとして1年後に追加接種することが基本となります(猫にはもっと頻回接種が必要だという説もあります)。その後の成犬・成猫時のワクチン接種はどうしたらよいのかは、現在獣医師の間でも議論されているところです。WSAVA(世界小動物獣医師会)のガイドラインでは、『子犬時にしっかりとしたワクチンプログラム(上記の接種プログラム)を実施した場合はコアワクチンについては3年に1回(ただし、日本では狂犬病のワクチンは年1回の接種が義務付けられているため1年ごとの接種となります)、ノンコアワクチンについては年に1回の追加接種でよい』とされています。猫については『猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)は3年に1回、猫ウイルス性鼻気管炎と猫カリシウイルス感染症は1匹のみの完全室内飼育で感染リスクの少ない場合は3年に1回、多頭飼育や室内外を行き来したり感染のリスクの高いケースでは毎年の接種』が推奨されています。ただし、海外と日本国内では認可・流通しているワクチンの種類が異なるので、なかなか海外の推奨プログラムをそのまま日本に当てはめるのは難しいところです。
本来であればワクチン接種の前に血液検査で予防を必要とする病気の抗体価が十分あるのか、落ちてきているのかを見極めて必要最小限のものを接種することが理想的なのでしょう(希望される方は血液検査にて各病気の抗体価を調べることはもちろん可能です)。
ただ、抗体検査は1つ1つの病気について測定が必要なので費用のことも含めなかなか難しいところです。また、トリミングやホテル、ドッグラン、集合住宅でのワクチン接種なども1年ごとの実施の証明が求められている現状もあるので、今のところ日本では1年ごとに1回毎年接種していくことが現実的なのでしょうか。

かつて狂犬病のワクチンは春と秋の年に2回の接種が義務付けられていましたが、現在は年に1回の接種でよいとされています。
近い将来、犬・猫のワクチンプログラムは変わっていくかもしれませんね。

血液検査のすすめ

初めて家に迎えた時に、あんなに幼かった子犬や子猫たち・・・。ミルクからふやかしたフード、そしてウエットフードやドライフードをたべられるようになり、今では自分からごはんやおやつを催促し、それどころかごはんのえり好みまでするようになりました。成犬、成猫になってから迎え入れた動物たちも、はじめはおそるおそる行動していたものの、今では生まれた時からここにいるような顔をしています。あっという間に大人になって、かわいいおじいちゃん、おばあちゃんになってきている動物たちもいることでしょう。動物たちがもたらしてくれる幸福感は計り知れないものがあります。共に暮らす幸せな日々はずっとずっと続いてほしいものです。

しかし、家族に幸せを届けてくれる動物(犬・猫)たちですが、人間の約5倍のスピードで年をとっていきます。気がつくと白髪も増え、歯も弱り、白内障や耳が遠くなったり・・・。若い頃のように活発に動きまわって遊ぶことも減って、眠っている時間が増えてきたりします。「年のせいかな」と思うこともあるでしょうが、内臓や心臓の病気、関節の病気が隠れていることもあります。自然な老化としてうけとめなくてはならないものもありますが、気づいてケアしてあげることでより快適な時間を長く過ごすことができることもあります。なかには生まれつき持っている病気がある動物や中年期より前に病気を発症しているケースもあります。(品種により生まれ持った体質、なりやすい病気なども数多く知られています。)目に見える症状が出る頃には病気が進行していることがほとんどです。

人間にも40歳過ぎたら人間ドックの案内があるように、大切な動物たちも健康に見える時に「健康チェック」「早めのケア」としての血液検査をおすすめします。また、持病のためお薬を飲んでいる動物たちも、肝機能・腎機能などの定期的な血液検査をおすすめします。

血液検査で全ての病気を把握することはできませんが、家族みんなで動物たちの健康を考える良い機会になってくれればと思います。動物の健康状態や検査結果、または飼主さんの希望によりその他の検査(尿検査、レントゲン検査、超音波検査など)も実施できます。まずはご相談ください。

※より正確な血液検査のデータを得るために、食餌を与えずに(12時間絶食)ご来院ください。

血液一般検査(CBC:complete blood count 完全血球計算)

血液は体重のうち数%を占め、血液の約半分が血しょうであり残りが血球成分です。血球成分は赤血球、白血球、血小板に分けられますが、それらの比率も正常時ではほぼ一定に保たれています。(動物種によって構成比率は異なっています。)血液一般検査はそれらの血液構成要素の詳細を調べることによって血液学的な面から動物の健康状態を調べるものです。

血液を高速で遠心にかけると重い血球成分は下に、軽い水分は上にと比重によってわけることができます。これらのうち、水分にあたるものは血清もしくは血しょうとよばれます。(血液が固まらないような薬剤を混ぜてから取り出した水分を血しょう、血液が固まった時に分離される水分を血清といいます。)

これらの中にはタンパクやホルモン、アミノ酸、糖、ミネラルなどを含み、動物が生きていくために必要な様々な成分が溶けこんでいます。血しょう中に血球成分が混ざって体中を循環することで動物の生命活動は成り立っています。

全ての血球成分は骨髄で造られています。骨髄には、全ての血球細胞に分化する能力を持った「多機能性幹細胞」があり、それが将来赤血球、白血球、血小板になる「骨髄系幹細胞」と将来リンパ球(Bリンパ球、Tリンパ球)になる「リンパ球系幹細胞」に分化し、全ての血球を造り出します。各血球にはそれぞれ分担された役割があります。

 

赤血球

赤血球はヘモグロビンという血色素を持ち、ヘモグロビンが酸素とくっつきあうことによって体中に酸素を運びます。ヘモグロビンは酸素の多いところ(肺)でくっつき、酸素の少ないところ(全身、末梢、各組織など)で離れるという性質があり、全身に効率よく酸素を運搬することができます。

 

白血球

白血球は特殊な染色液への反応性(染まり方)により、顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)リンパ球(Bリンパ球、Tリンパ球)に分かれます。白血球は免疫や生体防御に重要な働きを担っています。

 

好中球

好中球は成熟した分葉好中球と未熟な桿状好中球に分けられます。好中球は炎症や感染などのとき血液中に増加し、細菌や異物を取り込んで殺菌することにより処理します。殺菌する成分には発熱を促す成分も含んでいるため動物に発熱がみられることがありますが、それは好中球が活発に働いている証拠にもなります。つまり、好中球は体に侵入してきた細菌を敵とみなして最前線で戦う兵士のような細胞なのです。

好中球は全体の半分くらいが血中をパトロールするように流れ、残りは予備として血管壁に待機しているのですが、その予備も使いはたすような緊急事態には未熟な桿状好中球までもが放出されます。(桿状好中球の放出は、第二次世界大戦末期に若者が0戦にのって特攻隊として突撃していったようなピンチも極まったような状態にあると考えていいと思います。)血中に桿状好中球がたくさん出現してくるということは、つまり動物にとって大変な緊急事態であることを示します。好中球は炎症があるとそこに集まってきて戦うという性質ありますが、好中球の死骸は膿の一部となって排泄されたり、マクロファージに食べられたりして一生を終えます。好中球数はその他にもストレスや興奮、ステロイド剤の使用などでも増加します。また、好中球の必要性が高まり、使いはたしてしまった時(敗血症やその他の重度な感染症など)や、骨髄での産生能力の低下や正常に成熟できない時に減少します。

 

好酸球

好酸球は寄生虫疾患やアレルギーと関連の深い白血球です。アレルギー性の皮膚炎や呼吸器疾患、寄生虫感染のときに増加します。好酸球の細胞質内に含まれる顆粒成分がはじけ出すことによって寄生虫を取り囲んで殺したり、顆粒成分によって炎症を制御したりするなど免疫および炎症反応を調節しています。

猫では好酸球が皮膚、胃腸その他に集積して皮膚炎や消化器症状などを示す病気が時々見られます。原因は不明とされていますが、ステロイド剤の投与で一時的に好酸球を減少させて症状を緩和することができますが完治するものではないので悩ましい病気の一つです。犬でも消化器症状をくり返す時に好酸球の増加がみられることがあります。

肥満細胞腫などの悪性腫瘍の時、肥満細胞が好酸球を呼びよせる物質を出すので血液中に好酸球が増えることがあります。

好酸球の減少は、ストレス、ステロイド剤の投与、副腎皮質機能亢進症、急性炎症や感染でもみとめられます。

 

好塩基球

好塩基球は細胞内にヒスタミンやヘパリンなどを含んだ顆粒を持つ白血球です。末梢血中にはほとんどみられることはありません。組織に出ると肥満細胞になるのではないかという説もありますが好塩基球と肥満細胞は全く別のものであるという説もありいまだに明らかにされていません。

肥満細胞は組織中で分化・増殖することが知られています。肥満細胞はアレルギーに関与し、ヒスタミンなどを含んだ顆粒を大量に持っています。ヒトの花粉症などの時によく耳にする細胞かもしれません。肥満細胞に抗体がくっつき、抗原(花粉症の場合、花粉など)が2つ以上の抗体にまたがって捕まえられると(架橋)抗原抗体反応により細胞内に含まれるヒスタミンなどが放出され即時型アレルギーが起こります。花粉症では目や鼻がムズムズし、くしゃみや涙や鼻水が出てきます。ヒスタミンは細胞間を開いて免疫細胞を呼び寄せやすいような環境を作りますが過剰な反応は困った症状を引き起こしてしまいます。犬にも花粉症(花粉によるアレルギー反応)がありますが、主にみられる症状は結膜炎、体のかゆみです。

 

単球

単球は血中を流れて組織に移動し、マクロファージへと分化します。マクロファージは微生物・異物などを取り込んで処理します(貪食作用)。膿の中にも働きを終えた多数のマクロファージが含まれています。

 

リンパ球

リンパ球は他の血球と同様におおもとは骨髄の「多機能性幹細胞」から造られますが、その他の血球よりも早く系統が分かれ「リンパ球系幹細胞」に分化し、主にBリンパ球とTリンパ球に分化していきます。その他にもNK細胞(ナチュラルキラー細胞)なども造られます。

Tリンパ球は骨髄から胸腺(thymus)に入って分化生産されます。Tリンパ球は抗体産生の調節と細胞性免疫(抗体が関与せずにリンパ球やマクロファージなどが直接標的物に作用する免疫)の主役となるリンパ球です。細胞性免疫は遅延型アレルギー(食物アレルギーの一種やワクチンの反応など)に関与しています。ヒトで実施されるツベルクリン反応もこの細胞性免疫反応を利用して発赤や硬結の大きさを調べて結核菌感染の有無を調べています。移殖片の拒絶反応、腫瘍、ウイルス、寄生虫、原虫に対する免疫、一部の自己免疫などがTリンパ球による細胞性免疫です。

一方、Bリンパ球はTリンパ球より長く骨髄(bone marrow)にとどまり、その後脾臓やリンパ節などのリンパ組織に放出され、抗体を産生する細胞(形質細胞)へと分化するリンパ球です。Bリンパ球は体がすでに認識している異物(抗原)に対して抗体を産生して、免疫グロブリンの働きにより抗原を攻撃し(抗原抗体反応)感染防御に働く体液性免疫の主役となるリンパ球です。体液性免疫は即時型アレルギーに関与しています。

顕微鏡による検査では、Tリンパ球とBリンパ球を形態で区別することはできないのでまとめてリンパ球として数えます。

 

血小板

血小板は骨髄の「多機能性幹細胞」から分化する骨髄巨核球の細胞質がちぎれて作られています。血小板は止血に重要な役割を持っています。血液中を流れる血小板は傷ついた血管に粘着して傷をふさぎ、顆粒を放出して他の血小板を呼びよせてかたまり(血餅)を作り出血をくいとめます。(止血は血小板の他にも複雑なメカニズムが関係して成り立っています。)血小板は止血以外にも細菌、ウイルスなどの微粒子を取り込んで貪食作用を行ったり、血管の収縮/拡張にも関与したりしています。

血小板は炎症や貧血、悪性腫瘍、重度の怪我や骨折、脾臓のトラブル(摘出術後、機能不全、機能低下)などの時や骨髄巨核球の腫瘍性増殖のとき増加します。

血小板の減少は産生の低下、破壊や利用の亢進、体外への過度の損失、敗血症、自己免疫疾患(免疫介在性の血小板崩壊)、ウイルス感染などのときにみられます。ワクチン接種も一過性の血小板減少がみられることがあります。犬ではリンパ腫、腹膜炎、貧血、DIC(播種性血管内凝固)、慢性肝炎、脾腫、ある種の薬剤やホルモン、骨髄性白血病、その他の腫瘍、アジソン病などでも血小板減少が認められます。血小板が減少すると内出血がおき、紫斑がみられたりします。

血液中の血球成分の構成は本来その動物種ごとに決まった割合に調整されています。それらの数を数えることにより感染、脱水、貧血、腫瘍(白血病など)その他の情報を得ることができます。

当院では赤血球1μl(1マイクロリットル:1mlの1/1000)中の赤血球、白血球、血小板の数と血液中の赤血球の割合(PCV)、ヘモグロビン濃度(赤血球の希釈液を溶血させてその中に含まれるヘモグロビンの濃度を測定。PCVの約1/3の数値となります。貧血の検査で重要な項目です。)MCH(平均赤血球容積)、MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)、MCH(平均赤血球ヘモグロビン量)は自動血球計算機で測定しています。

白血球分画(白血球の種類ごとの内訳)と網状赤血球(若い赤血球)の検査は、血液を検査用のガラスに一層にひきのばし、特殊な染色液で染色し顕微鏡を使って検査をしています。白血球分画は顕微鏡で白血球100個あたりの各血球の割合を数えることによって出し、血球計算機で測定した白血球数とかけあわせることによって血液1μl中の実数を算出します。

貧血の評価はMCV、MCHC、MCHを照らし合わせることにより4つのタイプに分類します。

  • 大球性低色素性貧血(MCV高値、MCHC低値:再生性貧血)出血、溶血が主な原因。骨髄の赤血球産生機能は正常
  • 正球性正色素性貧血(MCV、MCHCとも正常:非再生性貧血)慢性疾患や腎疾患、骨髄での生産能力低下
  • 大球性正色素性貧血(MCV高値、MCHC正常:非再生性貧血)骨髄の赤血球が腫瘍性大型化、猫白血病ウイルス陽性猫など
  • 小球性貧血(MCV低値、MCHC正常または低値:非再生性貧血)ヘモグロビンの合成に問題あり。鉄欠乏性貧血、慢性出血、吸血昆虫の慢性感染など

 

これらの検査により炎症、感染症、貧血、白血病などの有無(赤血球を含め、全ての血液細胞は腫瘍性の増殖で白血病をおこします。)、程度を調べ、あわせて実施する血液生化学検査と動物の触診、視診、聴診、飼主さんからの問診、病歴、薬歴などを総合して診断することになります。病気によってはその他の検査も必要になることがあります。

血液生化学検査(各検査項目について)

BUN(blood urea nitrogen:血中尿素窒素、血中尿素量)

食餌から摂取したタンパク質は、タンパク質が腸内でアミノ酸へ、アミノ酸が腸内細菌によってアンモニアへ、アンモニアが肝臓で代謝を受けて尿素へと体内で変換され、腎臓の尿細管を通って尿から排泄されます。

BUNの濃度は体のトラブルを起こしている場所により、腎前性(心機能障害、脱水、ショック、副腎皮質機能低下症など)、腎性(腎機能の様々な障害)、腎後性(尿道閉塞、膀胱破裂、尿道破裂など)によって上昇します。

食餌性のタンパク質摂取の減少、慢性の肝疾患、著しい利尿の病気(尿崩症、副腎皮質機能亢進症)などでは低下がみられます。

 

CRE(creatinin:クレアチニン)

クレアチニンは大部分が筋肉内のクレアチンからの代謝産物で、一定のペースで産生され、一定のペースで排泄されます。クレアチニンは腎糸球体でろ過された後再吸収されることなく排泄されるので、糸球体のろ過能力の低下で上昇します。BUNよりも食餌の影響を受けにくく、腎機能を比較的正確に反映しています。筋肉量が低下しているときに低下がみられることがあります。

 

IP(phosphorus:リン)

リンの濃度はホルモン(副甲状腺ホルモン)の作用により腎臓から排泄されることで調整されています。

犬猫の最も一般的な高リン血症の原因は腎不全です。他にも食餌や溶血(赤血球には多量のリンが含まれています)、上皮小体機能低下症、栄養性二次性上皮小体機能亢進症、ビタミンD過剰症、猫甲状腺機能亢進症などでも上昇します。

一方、アルカローシス、上皮小体機能亢進症、悪性腫瘍の高カルシウム血症、ケトアシドーシスを伴った糖尿病の初期などでも低下します。

また、リンは体の中でカルシウムとの比がCa:P=1:1~2になるように調整されています。偏った食餌(ドッグフードの他に肉類を添加したものなど)はこのバランスが崩れ弊害をおこすことがあります(詳しくはCaのところで述べます)。

 

ALT(alanine aminotransferase:アラニンアミノ転移酵素

➜かつてはSGPT 血清グルタミン酸ピルビン酸転移酵素)

ALTは肝細胞の細胞質内に多く含まれている酵素で、肝細胞の障害や破壊がおこると肝細胞膜からもれだして血液中に放出されます。つまりALT値の上昇は肝細胞の障害を示していますが、数値が肝機能の程度を示すものではありません。

副腎皮質ホルモンや一部の細胞毒性のある薬物の投与によっても影響を受け、数値の上昇がみられます。著しい溶血や脂肪血でも偽上昇を認めます。また、ALTは一部筋肉組織内にも存在するので激しい運動時にも上昇します。正常の3倍以上の上昇は2~5日以内の肝障害を示していますが、ALT値のみで肝疾患と断定することにはなりません。

 

AST(asparate aminotransferase:アスパラギン酸転移酵素

➜かつてはSGOT 血清グルタミン酸オキサロ酢酸アミノ転移酵素)

ASTは犬猫では肝細胞と筋肉(横紋筋)に多く存在し、一部赤血球に分布しています(ヒトでは赤血球中にもSGPT、SGOTが多く含まれています)。

細胞のミトコンドリアに多量(約50%)局在し、細胞質には少量しか含まれていないので軽度な肝障害ではALT値だけが上昇しますが、重度な障害をうけるとAST値も上昇してきます。AST値の上昇だけでは肝障害か筋肉損傷によるものなのかは決めることはできません(後述するCKを測定することによって肝障害か筋肉の損傷なのかを見極めることができます)。

また、ALT同様副腎皮質ホルモンや一部の細胞毒性のある薬物の投与にも影響を受けて上昇し、溶血や脂肪血で偽上昇を認めます。

 

ALP、SAP(alkaline phosphatase:血清アルカリフォスファターゼ)

ALPは肝疾患(胆管閉塞、胆汁うっ滞)や副腎皮質機能亢進症のときなどに検査をする項目の1つです。犬猫ではALPの酵素は主に肝臓、骨、小腸に分布しています。犬の場合は正常の2~3倍以上の上昇が認められると臨床的に「異常」と診断しますが(ALP値のみが軽度上昇し、その他の項目が正常範囲内で臨床症状もない場合は経過観察とします)、猫の場合はわずかな上昇でも「異常」と診断されます。

犬の場合ALP値は肝臓、ステロイドホルモン、骨、小腸など起因するものによって数値が大きく異なります。

肝臓に起因するALP値の上昇は肝内性または肝外性(膵炎、膵臓腫瘍、三臓器炎、胆石)の胆汁うっ滞性疾患によるものが多いです。ALPは肝細胞中には少なく微細胆管上皮に多く存在するので胆管閉塞により胆汁が逆流すると胆管上皮にダメージを与えてALP値が上昇し、同時にALTやASTも高値となります。肝細胞の炎症、壊死、膿瘍の時はALTやASTは高値でもALP値は数倍程度です。この場合は病気が進行してくるとALP値も上昇してきます。

ステロイドホルモンに起因するALP値の上昇は、投薬によるものも自分自身の体内のホルモンによるもののいずれも影響を与えます(ステロイドホルモン剤の長期投与や副腎皮質機能亢進症のときはALP値が20~30倍になることもあります)。その他一部の薬剤もALP値の上昇をおこすことが知られています。

骨に起因するものとしては成長期の若い犬でALP値の上昇がみられることがあります(小型犬で上限または少し上昇、大型犬で2~2.5倍)が、成犬の正常値の2.5倍以上になることはまずありません。骨疾患による上昇も2倍程度までです。

小腸の疾患に起因するALP値の上昇はパルボウイルス感染症、急性胃腸炎、膵炎や他の小腸の炎症などと胆汁うっ滞があれば正常値の4倍くらいの上昇を示します。

猫のALP値の上昇を認めるものは、全ての肝疾患、肝リピドーシス、胆管炎、胆管肝炎、三臓器炎、甲状腺機能亢進症、糖尿病まれに骨疾患などです。

 

GGT、γGPT(γ-glutamyltransferase:γグルタミルトランスフェラーゼ)

γGTPは細胞質内および膜結合性の酵素で多くの組織に存在しますが、腎臓および胆管上皮の一部に高濃度に存在し、骨には認められません。

ALPと同じように肝胆道系疾患(胆汁うっ滞)のときに上昇しますが骨には存在しないので骨疾患との鑑別にも用いられます。

猫では胆汁うっ滞の診断時にALPよりも有用です。

犬ではステロイドホルモンによってγGTPの値が上昇します。抗けいれん薬は数値に影響を与えません(ALPの値は上昇します)。脂肪血では数値が高く出ることがあります。

ちなみに、ヒトがお酒を飲むと肝細胞にダメージを与え、γGTP、ALT、ASTなどの酵素が漏れ出してくるため数値が上がります。つまり、どの程度肝細胞が壊れてしまったのかという指標となっています。

 

TBIL(total bilirubin:総ビリルビン)

ビリルビンは古くなったりダメージを受けたりした赤血球が、脾臓などで破壊されることによってつくられた胆汁中に含まれる黄褐色の色素です。

ビリルビンには脂溶性の間接ビリルビン、水溶性の直接ビリルビンの2種類がありますが、犬猫ではこれらの区分はあまり意義がないので総ビリルビンとして測定します(赤血球が壊されることによってできた間接ビリルビンは比較的毒性が強いのですが、肝臓で変化をうけることにより直接ビリルビンに変換され速やかに排泄されます)。

TBILは肝疾患や黄疸(身体検査で粘膜や皮膚が黄色化していたり、採血後の血清、血しょうが黄色化したりしているとき)に測定します。

TBILが高い値を示すのは「肝疾患」と「溶血性疾患」の2つが原因となります。「溶血性疾患」は病気、自己免疫疾患、薬物などで赤血球が大量に壊れてしまうときにおこります。黄疸は病態によって肝前性黄疸(溶血性貧血や腸内出血等、体内での出血などによるビリルビン産生の増加)、肝性黄疸(肝疾患によるビリルビンの取り込み不全など)、肝後性黄疸(胆管系の閉塞、破裂、胆汁うっ滞)などの3つに分類されます。

 

NH3(ammonia:アンモニア)

食餌から取り込んだタンパク質は、消化管でアミノ酸に、さらにアミノ酸は腸内細菌によって毒性の強いアンモニアに分解されます。その後肝臓に運ばれて毒性のない尿素に変換され、腎臓から尿を通じて排泄されます。

アンモニアの値が上がると、その中枢神経毒性により「肝性脳症」とよばれる症状がみられます。

門脈シャント、肝硬変、重度の慢性肝疾患などで血中アンモニアの上昇がみられます。

 

TP(total protein:総タンパク)

血清タンパクの大部分は肝臓で合成されています。TPとは血清アルブミンと血清グロブリンを合計したタンパクの総和のことです。

TPは血液の粘稠度や脱水の目安となります。また重度脱水、炎症、リンパ腫、骨髄腫、感染症などの時増加し、タンパクの喪失(腎臓・消化器からの喪失、創傷からの出血、火傷、膿瘍、手術後、筋肉壊死など)と、タンパク産生の低下(激しい肝疾患、食欲不振による飢餓、吸収不良など)と免疫疾患(グロブリン産生が低下するとき)などで低下します。

 

ALB(albumin:アルブミン)

アルブミンは肝細胞でのみ産生され、血清タンパクの半分以上を占めています。慢性肝疾患ではアルブミンの合成が低下します。

アルブミンは浸透圧を維持したり、脂肪、薬物、ホルモン、カルシウムなどと結合して体内で運搬するトラックのような役目を持ったりしています。

アルブミンは脱水の時高値を示し、飢餓、寄生虫感染、慢性吸収不良性疾患、タンパク漏出性腸炎、慢性肝疾患、糸球体腎炎などのとき低値を示します。

 

GLB(globulin:グロブリン)

グロブリンはTPからALBをさしひいて求められる免疫に関連したタンパクであり、慢性炎症時に上昇します。グロブリンはアルブミンと異なり複数種類のものがあります。

高グロブリン血症には、1種類の抗体産生細胞が免疫グロブリンをたくさん産生したためにおこるもの(犬の多発性骨髄腫、リンパ腫など)と、抗体産生細胞と一緒に、肝臓で作られる「フィブリノーゲン」という急性相反応性タンパクも同時に増加する慢性炎症、肝疾患、または化膿性炎症などがあります。

低グロブリン血症の主な原因は出血やタンパク漏出性腸炎です。

 

GLU(glucose:グルコース、血糖値)

グルコースは哺乳類にとって大切なエネルギー供給源であり、食餌から取り入れたり肝臓で作られたりします。血中濃度はいろいろなホルモンによって調整されています。

GLUが上昇する原因としては、ストレス(犬では250mg/㎗、猫では200~350mg/㎗まで上昇)、治療のためのブドウ糖投与、一部の薬物、糖尿病などがあります。

糖尿病では、多飲多尿、体重減少、白内障などが、糖尿病性ケトアシドーシスでは嘔吐、下痢、食欲不振などが現れます。

GLUが低下する原因としては、小型犬(特に幼犬の低血糖:肝臓でのグリコーゲン貯蔵能力が低いためおこりやすい)、敗血症、菌血症、肝機能障害、一部の内分泌疾患、ある種の腫瘍、一部の薬物などがあります。低血糖時にはけいれん発作、虚弱、虚脱、方向感覚の喪失、沈うつ、視力喪失、昏睡などがみられます。

溶血、黄疸、脂肪血のとき測定誤差が出ることがあります。

 

AMYL(amylase:アミラーゼ)

犬猫ではアミラーゼは主に膵臓で作られる酵素で、炭水化物を分解します(一部腸や肝臓でも作られています)。アミラーゼは膵臓から直接血中に入り、その後腎糸球体でろ過され尿細管上皮から再吸収されます。アミラーゼは嘔吐、腹痛、肥満、黄疸、腹水、膵炎の既往症があるようなときに測定します。

2(~3)倍以下の上昇は、上部消化管の炎症、腎臓の排泄能力の低下を示し、2(~3)倍以上の上昇は膵臓の炎症・壊死(膵炎)、膵管の閉塞を疑います(必要に応じてレントゲン、超音波検査も実施します)。小腸疾患、小腸破裂、肝疾患によっても軽度上昇します。

その他の検査で腎機能障害が除外されたとき膵炎を疑うことになります。リパーゼとセットで測定します。

アミラーゼの測定値は脂肪血で偽低値、溶血により偽高値を示します。

 

LIP(lipase:リパーゼ)

リパーゼは主に膵臓で作られる酵素で、トリグリセライド(中性脂肪)を分解します。リパーゼは腎臓で不活化されます(一部膵臓以外の他の臓器でも作られています)。

軽度の上昇は、上部消化器障害、腎不全による排泄減少、一部の薬物の影響などでみられます。正常の2~7倍の上昇は急性膵壊死、膵炎(48時間以内に上昇)でみられます。

リパーゼはアミラーゼとセットで検査をしますが、アミラーゼよりも長時間高値を維持する傾向がみられます。溶血、脂肪血では測定値が偽上昇します。

アミラーゼ、リパーゼとも膵臓だけに限局する酵素ではないため、これらの酵素の上昇がすぐに膵炎を示すわけではないので、その他の検査と総合して診断します。

 

TLI(トリプシン様免疫反応物質)

膵臓からは微量のトリプシンが放出され、血中のトリプシン様免疫活性物質を測定することで膵外分泌不全を診断することができます。膵外分泌不全と吸収不良症候群(小腸の疾患の1つ)は、臨床症状では区別できないのでTLIの測定は重要なものになります。また、TLIは、急性膵炎の診断に用いられます。

TLI濃度は発症3日後には急速に低下するので発症早期に空腹時に採血して測定します。

 

フルクトサミン

フルクトサミンはグルコースとアミノ酸が反応することによって作られる糖化血清タンパクです。フルクトサミンは食餌、日内変動に影響されないので糖尿病のモニタリングに最適だといわれています。フルクトサミンが増加しているということは、持続的な高血糖が2~3週間前から続いているということを示しています(外注検査となります)。

 

Ca(calcium:カルシウム)

体内でのカルシウムの役割は大きく分けて2つあります。1つは骨や歯の構成成分であること、もう1つは酵素反応、血液凝固、神経や筋伝達、筋収縮、細胞膜の透過性の調節に関与するミネラルであるということです。

高カルシウム血症になると、多飲多尿、嗜眠(眠ってばかりいる)、虚弱、衰弱、食欲不振、嘔吐、下痢などが、低カルシウム血症になると、神経質(不安、落ち着きがない)、けいれん発作、筋肉の振戦、疼痛などの症状がみられます。

高カルシウム血症の主な原因は、脱水、一部の悪性腫瘍、一部の内分泌疾患、腎不全、ビタミンDの過剰症などがあります。低カルシウム血症の主な原因は、低アルブミン血症(低カルシウム血症の代表的な臨床症状は示さない)、上皮小体(血中のカルシウムやリンの代謝に関係する内分泌腺)が関連するものが多いですが、他に腎疾患、産褥テタニ―(主に出産後の母犬が食餌からのカルシウム不足や、乳汁にカルシウムをとられてしまうことによっておこる、あえぎ、けいれん、ふらつき、意識混濁などを示す命が危険である状態)、急性膵炎などがあります。

測定値は脱水、脂肪血、溶血のとき偽上昇がみられることがあります。

 

カルシウムとリンの関係

リンのところで述べたように、体の中ではカルシウムとリンとの比が犬ではCa:P=1:1~2:1、猫では1:1~3:1になるように調整されています。偏った食餌(ドッグフードの他に肉類を添加したものなど)はこのバランスが崩れ弊害をおこすことがあります。タンパク質にはリンが含まれているため、動物たちが日常的に摂取する食餌(ドライフード、ウエットフード、動物用のおやつ類、肉、魚、卵など)でリンが不足することはまずあり得ません。しかし、カルシウムは全ての食材に豊富に含まれているわけではなく、吸収も悪いため体に入ってくるカルシウムとリンのバランスには不均衡が生じやすいのです。栄養バランスを考慮されたドライフードやウエットフード(総合栄養食の標記のあるもの)はすでにカルシウム・リンバランスをととのえてあるものなので、過剰な肉類の添加やおやつ、ごほうびのあげすぎなどはリンのとりすぎにつながります(一日に必要なカロリーの1~2割程度であれば心配ないとはいわれています)。過剰に摂取した分のカルシウム・リンバランスの調整はホルモンの働きにより、骨からカルシウムを抜き出すことによって一定のバランスに整えられます。日々カルシウムを放出し続けた骨は弱く折れやすく骨折しても治りにくくなってしまいます。レントゲンでもスカスカの薄くて弱い骨に写ります(栄養性二次性上皮小体機能亢進症)。猫のウエットフードも、嗜好性重視のため、総合栄養食ではないものが多く販売されています。それらは必ずドライフードと混ぜて与えてください。栄養性二次性上皮小体機能亢進症は、犬よりも猫に多い病気です。ドックフードを主食としていない犬も注意してください。

 

CK、CPK(creatine phosphokinase:筋酵素、筋肉内酵素)

CKは骨格筋に一番多く、ついで心筋、脳、平滑筋に分布しています。CKは筋肉の障害があるときや全身衰弱のときに測定します。

筋肉の細胞膜を傷害する全ての状態で上昇しますが筋の障害の程度により、軽度(運動、拘束、筋肉注射など)、中等度(けいれん、外傷、神経障害)、重度(筋炎、猫の下部尿路閉塞など)のときCK値の上昇がみられます。

 

TCHO(total cholesterol:総コレステロール)

コレステロールは主に肝臓で合成され(残りは食餌から供給されます)過剰なコレステロールは胆汁中に排泄されます。コレステロールは体内で最も一般的なステロイドであり、各種ステロイドホルモンや胆汁酸の合成のもとになる物質です。ヒトと違い、犬や猫ではコレステロールによる血管硬化はほとんど見られません。

高コレステロール血症は、食後、内分泌疾患(糖尿病、甲状腺機能低下症、クッシング症候群)、ネフローゼ症候群、膵炎、胆道の閉塞性疾患で認められます。

低コレステロール血症は、タンパク漏出性腸炎、消化不良/吸収不良、肝障害(門脈シャント、肝硬変)などのとき認められます。

一部の薬物により血中濃度が影響されます(上昇するものも低下するものもあります)。黄疸、脂肪血では測定値は実際の測定値は実際の値より高くなります。

 

TG(triglyceride:トリグリセライド、トリグリセリド、中性脂肪)

TGは体の中で最も多く含まれる脂質でエネルギー源となります。TGは肝臓で合成されるものと食餌から摂取するものがあります。

食後の血液では高TG血症がみられることがありますが(食後12時間まで出現)、絶食時にみられる高TG血症は病的な所見であり、内分泌疾患(糖尿病、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症)、急性膵炎、ネフローゼ症候群などを疑います。時に飢餓でも高TG血症がみられることがあります。高TG血症は血清や血しょうを白濁させます(乳び、高脂血症、脂肪血)。高TG血症は、くり返す腹痛、嘔吐、消化器症状、てんかん発作などがみられることがあります。重度の脂肪血はいろいろな血液生化学検査の測定値に影響を与えます。胆汁うっ滞などの肝障害で高ビリルビン血症のときはTG値が偽上昇を示します。

 

TBA(total bile acid:総胆汁酸)

胆汁酸は肝臓でつくられ、胆管を通り胆嚢にためられて腸管内に出て脂肪の消化吸収を助け、回腸でほとんどが再吸収されて肝臓に戻ります(腸肝循環)。肝臓に障害があると、胆汁酸が腸肝循環をはずれ、末梢血中に脱出してきます。

胆汁酸は、門脈シャント、肝硬変の末期で上昇します。胆汁は脂肪の消化に関係するので、検査をするときは、絶食12時間以上の空腹時と、食後(脂肪食)2時間のセットで測定して診断します(外注検査となります)。

 

Na(natrium:ナトリウム)

動物の体重の約60%は水で作られています。本来体内の水は、ホルモンや電解質による浸透圧調節により適正に保たれています。Naは主に細胞の外にある電解質ですが、Naの値がくずれるような原因があるといろいろな変調を示します。

Naの値が上昇する原因には、嘔吐、下痢、無飲症(渇感欠如)、充分に飲水ができなかった時の脱水(体内から自由水が過剰に失われたことによる脱水)、呼吸器からの蒸散(昏睡、高体温など)、腎臓や消化管からの水分喪失(腎臓:尿崩症、糖尿病、腸:浸透圧下剤)による脱水などがあります。

Na値が低下する原因には、下痢、嘔吐などの消化器症状、多尿、腎疾患による水分の再吸収障害(猫の慢性腎不全、老齢な猫など)、副腎皮質機能低下症、心不全、ネフローゼ症候群、糖尿病、肝硬変、交通事故などによる尿路破裂、膀胱破裂などがあります。

 

K(kalium:カリウム)

Naが主に細胞の外にある電解質であるのに対し、Kは細胞の中にある電解質です。Kも様々な原因によりバランスがくずれることでいろいろな症状(時に致死的)を示します。

高K血症を示すのは、脱水、乏尿性や無尿性の腎不全、尿路の断裂、尿道閉塞、副腎皮質機能低下症、筋肉の大きな損傷(交通事故など)、糖尿病性ケトアシドーシスなどです。著しい高K血症は心停止をひきおこします。致死的な高K血症は、副腎不全や腎不全に続発することが多いです。

低K血症となる原因は、主に嘔吐、下痢、腎臓からの喪失(猫の慢性腎不全など)、低体温、衰弱、薬物(インスリン、重炭酸塩など)、不適切な輸液療法などがあります。

 

Cl(chloride:クロール)

Clは細胞の外にある主要な電解質(Na、Kが陽イオンなのに対しClは陰イオンです)で、酸塩基平衡(血中のpHを適正に保つ)や浸透圧の維持に重要な役割をはたしています。

高Cl血症をおこす原因は、小腸性下痢、腎不全、脱水などです。

低Cl血症をおこす原因は、胃性嘔吐(胃液が出ることによるClの喪失)、副腎皮質機能低下症、利尿剤の使用などです。

 

 

 

参考文献

小動物の臨床病理学マニュアル(日本獣医臨床病理学会編  監修 小野憲一郎 髙橋英司:学窓社)

動物看護のための小動物臨床検査[上巻] 笠原和彦 監修 日本小動物獣医師会 動物看護士委員会:ファームプレス

勤務獣医師のための臨床テクニック~必ず身につけるべき基本手技30~ 監修 石田卓夫:チクサン出版社

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