ちょっと詳しく|日野市石田で動物病院をお探しの方はあおい動物病院まで

日野市石田・あおい動物病院

042-585-6300

休診日:木曜日・日曜日午後・祝日

ちょっと詳しく

微生物ってどんなもの? ~細菌、ウイルス、真菌、原虫についてくわしく~

私たちの身の回りにはたくさんの微生物・・・目に見えない小さい生き物たちがたくさんいます。それらのうち、細菌、ウイルス、真菌、原虫について詳しく書いてみたいと思います。これらの微生物の違いってわかりますか?微生物の中には人間の生活に役立つものもいろいろありますが、今回は病気をおこす原因となる病原微生物を中心にみていきたいと思います。細菌、ウイルス、真菌、原虫の比較を下に示します。

 

表 細菌、ウイルス、真菌、原虫、ヒトの細胞の比較

細菌 ウイルス 真菌 原虫 ヒトの細胞
大きさ 0.5~10㎛ 20~30㎚ 2~10㎛ 1~20㎛ 6~25㎛
核膜 なし なし あり あり あり
細胞壁 あり* なし あり なし なし
自力で増殖 できる* できない できる できる できる

*例外あり   1㎜=1000㎛ 1㎛=1000㎚

 

これらの病原微生物は、環境からの水平感染(接触感染、空気感染(飛沫感染は空気感染の一つの様式です)、経口感染、)や、母子間の垂直感染(経卵感染、胎盤感染、産道感染、母乳感染)で感染を広げていきます。

 

■細菌

細菌の細胞の遺伝子は私たちの細胞(真核細胞)と異なり、核膜に囲まれておらず(原核細胞)私たちにはない細胞壁をもっています。細菌はその形状から「球菌(まるい形)」、「桿菌(細長い棒状)」、「らせん菌(らせん状)」に分けられます。また、細菌の細胞壁のタイプは染色の反応(染色性)によって大きく2種類に分けられ、『グラム染色』を行うと濃い紫色に染まる「グラム陽性菌」、ピンク色に染まる「グラム陰性菌」に分けられます。「グラム陰性菌」は細胞壁の外側に『リポ多糖類』などの外膜におおわれ、細菌が死滅したときに外膜がはがれてヒトなどの細胞に作用すると免疫をかく乱し、ショック症状を引きおこすなどの毒性を示すことがあります(内毒素、エンドトキシン)。犬や猫の『子宮蓄膿症』の時に「手術が無事に終わってもしばらくは入院して経過観察が必要です」とお話するのはこのエンドトキシンショックを警戒しているからなのです。また、「グラム陰性菌」は、この外膜があるために抗菌剤や消毒薬が菌内に入りにくい構造になっています。

細菌は形状やグラム染色性のほかに『増殖の条件に酸素を必要とするか』という特徴でも分類されます。それらは好気性菌(酸素がないと増殖できない菌)、微好気性菌(3~10%程度の時のみ増殖)、通性嫌気性菌(酸素があってもなくても増殖でき、無酸素状態では発酵する菌)、偏性嫌気性菌(酸素があると増殖できない菌)、CO2要求性(二酸化炭素が5~10%あるとよく増殖する菌)などがあります。また、細菌の中には、おかれている環境が悪くなると『芽胞』という緊急避難シェルターのようなものを形成して生き残りをはかるものもいます。この『芽胞』は100℃の高温や一部の消毒薬では死滅しません。そしてこの『芽胞』は条件が良くなると発芽して増殖を再開します。細菌感染の治療には抗菌剤(抗生物質など)が使われますが、多剤耐性菌の問題などもあり新薬の開発と耐性菌出現の「いたちごっこ」が続いています(後述)。以下に代表的な細菌をいくつか挙げてみます。

 

■黄色ブドウ球菌(グラム陽性通性嫌気性球菌)

黄色ブドウ球菌は私たちの手指を含めた皮膚から鼻腔などの粘膜まで、身体のいたるところに常在する菌です。ほとんどの細菌は塩分を苦手としますが、黄色ブドウ球菌は10%程度の塩分濃度でも生きていける菌(耐塩菌)です。たとえば塩むすびにくっついても生きのびて増殖してしまう菌です。また、黄色ブドウ球菌は増殖するときに「エンテロトキシン」という毒素を産生し、この毒素は菌が死滅した後も食品中に残り、消化酵素や熱にも抵抗があるため、黄色ブドウ球菌に汚染された食品を食べることによって嘔吐・下痢を伴う食中毒(毒素型食中毒)の原因となります。黄色ブドウ球菌は食中毒や皮膚の化膿のほかにも中耳炎、結膜炎、肺炎、尿路感染症、多剤耐性菌によるMRSA肺炎やMRSA腸炎などの感染症の原因になります。

また、ブドウ球菌の仲間には、ほとんど病原性のない表皮ブドウ球菌などがあります。表皮ブドウ球菌もアトピーなど皮膚のバリア機能が低下しているときや過剰増殖した際には皮膚炎の原因となることがあります。

 

■キャンピロバクタ―(グラム陰性微好気性桿菌)

食中毒の代表的な原因菌のひとつです。加熱不十分な鶏肉や生の鶏肉の付着などで、包丁やまな板、調理器具などが汚染され、それを介して食品に菌が入り込み食中毒(感染毒素型食中毒)の原因となります。キャンピロバクタ―は長い鞭毛をもち、コルクスクリューのような形態をして、くるくると動き回ります。犬猫の腸管内には常在の菌ですが、増えすぎると消化器症状(嘔吐、下痢など)をおこします。キャンピロバクタ―はヒトにとっては食中毒の原因菌となるので、犬猫に触った後はきちんと手を洗い、口移しで食べ物を与えることはしないようにしましょう。

 

■サルモネラ菌(グラム陰性通性嫌気性桿菌)

サルモネラ菌も代表的な食中毒の原因菌のひとつです。サルモネラ菌は加熱で死滅しますが低温でも増殖し、生や加熱不十分な卵からの食中毒の報告もあります。サルモネラ菌も犬や猫、カメなどにとっては常在菌なのでキャンピロバクタ―同様、動物たちの接し方には節度を持ってください。

 

■大腸菌(グラム陰性通性嫌気性桿菌)

ヒトを含む動物の腸内に常在しています。ほとんどが無害なのですが、5種類の病原性大腸菌が知られており、下痢などをおこします。O-157で有名な腸管出血性大腸菌も病原性大腸菌の5種類のうちの1つです。病原性大腸菌が腸管内で増殖するときに「ベロ毒素」と呼ばれる溶血性の毒素を産生します(感染毒素型食中毒)。特に乳幼児や高齢者では溶血性尿毒症症候群がひきおこされ、重症化すると致死率も高くなります。

 

■クロストリジウム属(グラム陽性偏性嫌気性桿菌)

クロストリジウム属は酸素のない環境下で増殖し、芽胞を形成する菌です。ハチミツに混入したボツリヌス菌の芽胞が消化管内で発芽して毒素型食中毒を起こす可能性があるため、1歳未満の幼児はハチミツの摂取をひかえるように言われています(大人は大丈夫です)。

ウェルシュ菌やセレウス菌は土壌やヒト、動物の消化管に正常でも少しいますが、増えすぎると下痢の原因になります。食事の変更、ストレスなどが消化管内細菌叢のみだれをひきおこし、クロストリジウム属(ウェルシュ菌やセレウス菌)の増加のきっかけとなることがあります。ウェルシュ菌は室温においたカレーの温めなおしで、セレウス菌は室温においたチャーハンやピラフ、米飯、などでおきる食中毒の原因菌となります。

 

■ウイルス

ウイルスは私たちの細胞や細菌と比べてもとても小さい生物です。ウイルス粒子は遺伝子である核酸(DNAあるいはRNA)を「カプシド」というタンパクの殻で取り囲んでおり、この核酸とカプシドからなる構造を「ヌクレオカプシド」といいます。ウイルスの種類によっては「ヌクレオカプシド」の外側を脂質と糖タンパク質からできた「エンベロープ(被膜)」で覆っています。

ウイルスは自分自身を複製するための情報(遺伝子)は持っていますが、その情報に基づいて新たなウイルスを組み立てていく設備や材料は持っていません。そこでウイルスが増えるためには生きた細胞に感染してその細胞の材料や酵素、エネルギーを利用しなければなりません。ウイルスは自分にとって都合の良い(感染のできる)細胞を見つけて取り付き、感染します。この時まずウイルスは細胞表面に存在するレセプター(受容体)に吸着してそこから細胞内に侵入して遺伝情報である自身のDNAやRNAや酵素類を放出します(脱殻)。その後侵入した細胞のシステムを利用してウイルス自身の遺伝情報を複製、転写、翻訳し、最後にその侵入した(感染させた)細胞を破壊しながら出芽して子孫のウイルスを放出していきます。

 

■狂犬病ウイルス(ラブドウイルス科・RNAウイルス・エンベロープあり)

犬を飼育している人は犬の生涯1回の登録と年1回の狂犬病予防注射が義務付けられています。狂犬病は今日日本では発生はありませんが、海外では日常的にみられる(毎年3.5万~5万人が死亡)病気です。発症するとヒトも犬もほぼ100%死亡し、治療法もない現代でも恐ろしい病気です。狂犬病ウイルスは銃弾型をしており、ヒトや犬だけでなく、全ての哺乳類や鳥などの恒温動物が感染します。

 

■コロナウイルス(コロナウイルス科・RNAウイルス・エンベロープあり)

コロナウイルスはいくつかの種類があり、ヒトでは現在7種類が知られています。このうち4種類はいわゆる普通の風邪、残りの3つは21世紀になってから出現してきた新型のコロナウイルスであるSARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)、COVID-19(今世界で大流行している新型コロナウイルス)です。ここではヒトのコロナウイルスについて深くは論じませんが動物にも動物の病気をおこすコロナウイルス感染症があります。

・犬のコロナウイルス感染症

犬に比較的軽症の下痢や嘔吐をおこすコロナウイルス感染症は子犬期にパルボウイルス感染症や細菌と混合感染し重篤化することがあるので注意をする必要がありますが成犬では症状を表さないことも多くほとんど問題になることはありません。

・猫のコロナウイルス感染症

猫では稀に軽度の下痢などの消化器症状をおこすものが一般的にみられるコロナウイルス感染症なのですが、何らかの原因でそのコロナウイルスが変異して強毒化し「猫伝染性腹膜炎」という病気をおこすことがあります。猫伝染性腹膜炎は腹水や胸水の貯留、内臓に肉芽腫の形成、食欲減退、発熱、嘔吐、下痢、てんかんなどの症状を示し致死的な経過をとることもある怖い病気です。

 

■インフルエンザウイルス(オルソミクソウイルス科・RNAウイルス・エンベロープあり)

インフルエンザウイルスにはA・B・C・Dの4つの型があり、BとC型はヒトのみが感染します。A型はヒト、鳥類、馬、豚、フェレットなどが感染し、D型はヒトには感染せず、牛、豚、ヤギ、ラクダ、ヒツジなどに感染します。インフルエンザウイルスは変異しやすいウイルスの代表ですが、それは毎年流行する一般的なインフルエンザウイルスA型のことを指しています。A型は他の型と異なりたくさんの亜型(140種類以上)があり、しばしば突然変異も起こるため新型のウイルスが次々に現れます。インフルエンザA型ウイルスは最も流行しやすいうえに症状が重く、鳥や豚などの動物からヒトにも感染する厄介なウイルスです。

時々耳にする鳥インフルエンザもA型のインフルエンザウイルスです。特に鳥に対して高い感染力と致死性を示すものは「高病原性鳥インフルエンザ」として分類されます。この高病原性鳥インフルエンザウイルスはほとんどヒトには感染しないとされていますが、海外では少数ながらヒトの感染・死亡例も報告されているので、今後ウイルスの変異によりヒトに感染しやすくなることがないかどうか警戒されています。

 

■重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルス、新型ブニヤウイルス感染症(ブニヤウイルス目 フェヌイウイルス科・RNAウイルス・エンベロープあり)

2011年に中国の研究者によって初めて報告された新型のウイルス。マダニが媒介し(病気を運ぶ)、動物だけでなくヒトにも感染し、致死率の高い怖い病気です。動物では犬も感染しますが猫のほうが感受性、致死率ともに高い病気です。日本での感染報告は2013年が最初ですが、これから増えていくことが心配されている新しい感染症です。2017年には野良猫を保護した人がその猫に咬まれてSFTSで亡くなってしまった例や、飼い主さんがSFTSに感染した犬を看病していてその動物から感染してしまった例も報告されています。動物のみならず、ヒトもマダニの潜む草むらに注意し、SFTSに感染した動物の血液、体液との接触や動物が体にマダニをつけて運んでくることからの感染を防ぐために犬猫のマダニの予防も徹底したほうが良いと思われます。

 

■ヘルペスウイルス(ヘルペスウイルス科・DNAウイルス・エンベロープあり)

ヒトでは水ぼうそうや口の周りのプツプツ、帯状疱疹をおこしますが、小動物では猫の伝染性鼻気管炎が重要です。ヘルペスウイルスは一度感染すると神経節に潜んで一生消えて無くなることはありません。いったん症状が落ち着いても、体調の変化やストレスなどで再び症状を現す(日和見感染)という特徴があります。

猫の伝染性鼻気管炎では、鼻炎、副鼻腔炎、結膜炎などの風邪の症状を示します。なかには慢性化し、蓄膿症(慢性副鼻腔炎)になってしまうこともあります。猫は鼻炎でにおいが感じられないと食べ物を認識できず食欲が落ちてしまいます(犬や猫の食欲には嗅覚による刺激がなにより重要なのです)。慢性経過をとることが多い病気ですが、子猫の場合重症化すると亡くなってしまうこともあります。定期的なワクチン(コアワクチン)にも含まれる病気です。

 

■パルボウイルス感染症(パルボウイルス科・DNAウイルス・エンベロープなし)

パルボウイルスはヒトでは伝染性紅斑(りんご病)をおこすウイルスとして知られています。幼児や子供の感染が多く通常は合併症もなく自然治癒し一生の免疫ができます。ただし、妊婦さんがかかると死流産の危険があるので免疫を持たない妊婦さんは要注意です。パルボウイルス感染症はヒトと動物の間で感染しあうことはありません。

犬のパルボウイルス感染症

犬のパルボウイルス感染症は定期的なワクチン(コアワクチン)にも含まれるもので、犬の病気の中でも致死率が高く感染力も強い怖い病気の代表格です。子犬に多い腸炎型は食欲不振、激しい嘔吐や下痢、血便、白血球減少、脱水、エンドトキシン血症をおこし、最悪の場合1~2日で死亡します。子犬期を過ぎた犬では突然死をおこす心筋型もあります。

・猫のパルボウイルス感染症

猫のパルボウイルス感染症は「猫汎白血球減少症」と呼ばれ、年齢を問わず発症し、犬同様感染力、致死率も非常に高い怖い病気です。高熱、元気消失、食欲不振に始まり、重症例では急激かつ激しい嘔吐、下痢をおこします。骨髄にパルボウイルスが増殖すると急激に白血球が減少し、免疫力低下、腸のあちこちから出血し下血、黒色下痢がみられます。感染末期には重度の脱水、エンドトキシン血症により死亡します。犬同様、猫のパルボウイルス感染症は定期的なワクチン(コアワクチン)にも含まれます。

 

パルボウイルスは環境中にも数か月以上生存し、動物の足や人間の靴の裏、その他にくっついてどこでも運ばれる可能性があります。また、60℃、1時間の加熱処理でも死滅せずアルコール、クレゾール、逆性せっけんなども無効です。ウイルスを死滅させるためには次亜塩素酸ナトリウム、ホルマリンでの消毒が必要です(ホルマリンは現在一般的には簡単に入手することはできません)。パルボウイルスはとても恐ろしい病気で感染力も強いので世界中に広まりましたが、そのためにワクチンが作られ、幸運にも治癒して強い免疫をもつ犬や猫が増えたことなどにより昔のようにあちこちで流行する病気ではなくなりました。ただしウイルスはこの世からなくなったわけではなく、このウイルスは免疫を持たない場合感染力が極めて高く環境中から排除されにくいなどの特徴から、免疫のない犬猫にとっては今でも怖い病気であることは忘れてはいけません。

 

■レトロウイルス(レトロウイルス科・RNAウイルスの中で逆転写酵素を持つグループ・エンベロープあり)

一般的に遺伝情報はDNAをもとにしてRNAが情報を写し取って遺伝情報を複製していきますが、逆転写酵素は自分のRNAを鋳型としてDNAを合成(逆転写)させるという特徴を持っています。ヒトのレトロウイルス感染症はヒトT細胞白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルスなどがあります。動物には動物のレトロウイルス感染症がありますがヒトと動物の間で感染することはありません。

猫白血病ウイルス感染症

猫白血病ウイルス(FeLV)は猫同士の食器の共有、お互いのグルーミングやじゃれあいなどで感染します。感染当初は一見健康そうに見えますが、ゆっくりと病気が進み、次第に元気がなくなり、免疫力の低下、口内炎、鼻炎、胃腸炎、病気が治りにくいなどの症状が現れ、リンパ腫や白血病などの致命的な病気を伴い、最後には死亡します。

猫免疫不全ウイルス感染症

猫免疫不全ウイルス(FIV)は血液、体液に含まれ、他の猫免疫不全ウイルス陽性猫とのケンカで感染します。猫白血病ウイルス感染症と同様に感染当初は症状はありませんが、次第に免疫力が低下し、口内炎、鼻炎、胃腸炎、けがや病気が治りにくいなどの症状がみられ、感染末期には人間のエイズのような症状が現れ死亡します。

 

これらのレトロウイルスは、はじめ無症状ですがゆっくりと進行し、徐々に免疫力が低下して死の転帰をとるという症状は共通しています。

 

■真菌

真菌はカビの仲間で、菌糸型(胞子から発芽をして菌糸をのばしながら増える。パン、餅、みかんなどに生える青カビなどのグループ)と酵母型(1つの細胞から出芽して増える。パンやみそ、ビールなどを作るときに利用される酵母のグループ)もしくは両方の形態をとるものがあります。真菌と細菌は全く異なる微生物なので、細菌感染に用いられる抗菌剤や抗生物質は全く効きません。

 

■皮膚糸状菌症(白癬菌症)

皮膚糸状菌症(白癬菌症)ヒトでは水虫の原因となりますが、ヒトから動物、動物からヒトにも感染します。動物の場合、フケ、円形脱毛、かさぶたを伴う赤味、痒み、丘疹(ブツブツ)などがみられます。

 

■マラセチア症

もともと正常な皮膚に住みついている常在菌ですが、増えすぎると強いかゆみを伴う皮膚炎や外耳炎をおこします。マラセチアはブドウ球菌と混合感染をして皮膚炎をおこすことが多いです。マラセチア皮膚炎は皮膚が赤くなり、べたつき、痒み、フケ、特有の臭いを伴い、耳、わきの下、内股などに特に多くみられます。マラセチアは脂を好む性質があるので、皮脂の分泌の多い犬種や部位に多く見られる皮膚炎です。また、マラセチアが増えすぎるとマラセチアに対してアレルギー反応を示すこともあり、アトピーで皮膚のバリア機能が弱い犬や甲状腺機能低下症を患っている犬では悪化することが多いです。マラセチア皮膚炎は猫では少なく犬に多い病気です。

 

■原虫

単細胞で宿主に寄生して生きる生物で、アメーバーなどの仲間です。

 

■トキソプラズマ

多くの哺乳類や鳥類が感染します。ヒトでは妊娠中に感染すると子供に先天性のトキソプラズマ症をおこして重大な障害を伴い、死流産をおこすことがあるので十分な注意が必要です。猫はトキソプラズマの終宿主(最終的な寄生動物)であり、便中に感染力のある「オーシスト」を排出するので、トイレの世話や公園の砂場などには注意が必要です。猫は感染してもほとんど症状は示しませんが、ごくまれに子猫や免疫力の低下した猫でさまざまな症状を示し、死亡することもあります。

 

■ジアルジア

ジアルジアは下痢の原因となります。新鮮な下痢便を顕微鏡で観察すると便中で動き回るジアルジアが観察されます。成犬が感染しても症状を示すことはほとんどないのですが、まだ抵抗力の弱い子犬が環境の変化やストレスがかかった時下痢をおこします。元気や食欲は正常のことが多いです。症状が重いと体重減少や発育不全をおこします。ジアルジア症は子犬での感染が多い病気です。

 

病原微生物を除去するには?

病原微生物を含む微生物を除去するにはいくつかの方法があります。全てに万能なものはないので目的や対象物によって適した方法、適さない方法があります。

  • 滅菌:病原微生物に限らずあらゆる生物を完全に死滅させるか取り除くこと
  • 消毒:対象となる微生物を死滅させること。必ずしもすべての微生物を死滅させる必要はな く、感染を生じさせない状態にすること
  • 殺菌:微生物を物理的あるいは化学的に死滅させること(滅菌+消毒)
  • 除菌:微生物を除去すること(全ての微生物を完全に除去する場合は滅菌となる)
  • 防腐、静菌:微生物の増殖を持続的に抑えること。死滅させるわけではない

日常的には、食器、ふきん、哺乳瓶、ジャムの瓶などは100℃ 10~20分の煮沸消毒が行われます。ただし、煮沸消毒では芽胞やある種の菌の毒素などは除去されません。実験器具や手術器具、金属、ガラス器具、プラスチック製品や医療用の精密機器類は焼却、乾熱(180℃ 60分)高圧蒸気滅菌(オートクレーブ、2気圧121℃ 20分)、ガス、放射線などの滅菌法が用いられます。これらはすべて「物理的な方法」となります。

一方、インフルエンザウイルス、コロナウイルスなどの日常的な対策としては全ての微生物を死滅除去する「滅菌」ではなく「消毒」が行われますが、手指や皮膚、器具、食器や傷、手術野の消毒には「化学的な方法」いわゆる消毒薬による消毒が行われます(消毒用アルコール、クレゾールせっけん液、逆性せっけん、ポピドンヨード、次亜塩素酸ナトリウムなど)。消毒薬は「何(手指、器具、傷口、汚物など)を消毒するのか?」、「何(細菌、ウイルスの種類、細菌なら芽胞菌かどうか)を取り除くために?」などによって選択される消毒薬は異なってきます。また、これらの消毒薬には有効かつ安全に使用できる濃度の指定があります。

新型コロナウイルスに有効とされる消毒用アルコール(70%エタノール)は多くの細菌やエンベロープを持つウイルスには有効ですが、芽胞菌やエンベロープを持たないウイルス(ノロウイルスやパルボウイルスなど)には効果がありません。ウイルスのエンベロープは脂肪、タンパク質、糖タンパク質からできているので、アルコールで脂肪が溶かされるとエンベロープを持つウイルス(インフルエンザウイルスやコロナウイルスなど)は構造が壊れてしまうので失活します。

塩化ベンザルコニウムは逆性せっけんであり、刺激もなく手指の消毒にも利用されますが、普通のせっけんで手を洗った後に利用すると効果を打ち消しあってしまうので併用は進められません。また、逆性せっけんはウイルスに対しては効果がありません。最近では手押しポンプに入った、エタノールと塩化ベンザルコニウムがミックスされた乾性擦式手指消毒薬もよく目にします。コロナウイルスなど感染症が気になる昨今ですが、まずは手洗いが基本です。流水とせっけんを使用した丁寧な手洗いと合わせて消毒薬を適切に利用し、上手に感染症から身を守っていきましょう。

 

病原微生物と戦う武器 ~抗菌剤・抗ウイルス剤・抗真菌剤~

私たちの身の回りには病原微生物がたくさんいます。私たちはそれらに対し、自身の免疫の力や消毒などで対抗しますが、万が一感染してしまったときは病原微生物を攻撃する武器として抗菌剤や抗ウイルス剤、抗真菌剤などを使うことがあります。病原微生物に対抗する手段としてワクチンもありますが、ワクチンは他のところで書いたので今回は説明から除きます。

 

■抗菌剤

抗菌剤は私たちの身体の細胞(真核細胞)を傷つけずに細菌(原核細胞)を倒すことを目的とします。そのため真核細胞と原核細胞の違いに着眼して攻撃を行います。

・細胞壁を標的とする薬

細菌が持っている「細胞壁」の合成を阻害して細胞壁を消失させて細菌を殺す

・タンパク質合成阻害剤

細菌のタンパク質の合成を阻害し、細菌の生育を抑え込

・核酸(DNA・RNA)合成阻害

細菌のDNAやRNAの合成を阻害することにより遺伝情報を発現できなくさせてタンパク質の合成を停止させ

・細胞膜機能阻害

生命を維持するために必要な細胞膜の透過性に関与し、選択的な透過性を変えることによって細菌の細胞内成分が放出されて死滅す

・葉酸合成阻害

細菌の代謝に必要な葉酸と構造が似ている成分を利用して細菌の葉酸の生合成を阻害する。薬剤がなくなると正常の機能に戻ってしまうので殺菌的ではなく静菌作用(細菌の増殖と活動を停止または低下させて起こる効果)とされている

 

■抗ウイルス剤

イルスは細菌に対する抗菌剤のようにウイルスを殺す薬は存在しません。そのため、ウイルスの増殖過程のどこかを阻害してそれ以上ウイルスが増えることができないようにすることを目的としてインターフェロンや抗ウイルス剤が使用されます。

ウイルスは宿主の生きた細胞に寄生して宿主の細胞の構造を利用しながら増殖しているので、宿主の細胞の機能に影響を与えないようにウイルスを阻止するのはとても難しいことなので、細菌に対する抗菌剤に比べると圧倒的に少なくなります。また、全てのウイルスに対して万能な抗ウイルス剤はありません。

・インターフェロン

ウイルスが細胞に感染すると細胞内に誘導される抗ウイルス性のタンパク質。ウイルスのRNAの切断やウイルスのタンパク質の合成を抑制する作用がある

・核酸(DNA・RNA)合成阻害

ウイルスのDNAやRNAの合成を阻害することにより遺伝情報を発現できなくさせてタンパク質の合成を停止させ

・プロテアーゼ阻害剤

抗HIV薬として開発された薬。HIVウイルスが細胞に作らせた複合タンパク質は、ウイルス自身が利用できるピースに切断する必要があります。その時に複合タンパク質を切断するために使われるのがプロテアーゼという酵素で、このプロテアーゼを阻害することによってウイルス粒子の組み立てを阻止してウイルスの産生を抑える。新型コロナウイルスに対して効果がありそうなデータも出てきていますが、今のところはまだ有効性は確立されていませ

・その他

他にもウイルス固有の酵素やウイルスが宿主の遺伝子に遺伝情報を組み込ませることを阻害するもの、ウイルスが細胞に感染・侵入する部位に作用するものなど、日々新しい抗ウイルス剤が開発研究されています

 

■抗真菌剤

真菌は私たちと同じ真核生物なので細菌に対する抗菌剤のような方法はとれません。そのため抗真菌剤の開発にはとても時間がかかったようです。私たちの細胞と真菌との大きな違いは「真菌は細胞壁をもっている」ことと「細胞膜の主成分としての脂質が異なる」という点です。これらに着眼して抗真菌剤は開発されています。

・細胞膜成分を標的

私達を構成する細胞と真菌では細胞膜を構成する脂質の成分が違うことを利用し、真菌に対してのみ含まれる細胞の成分をターゲットとして膜合成や膜の機能を阻害して抗真菌作用をしめす

・その他の作用の薬剤

DNA合成阻害と異常RNAを生成させる、細胞壁の合成酵素を阻害、真菌の細胞分裂に関与する紡錘糸の移動を阻害するなどで抗真菌効果を示す

 

■抗原虫薬

原虫のDNAを切断することなどにより原虫の生命活動を阻害する薬などがあります。

 

■薬剤耐性菌と耐性ウイルス

さまざまな抗菌剤、抗ウイルス剤が日々研究開発されていますが、細菌やウイルスサイドも次々と薬剤耐性菌、多剤耐性菌、耐性ウイルスを出現させてきているので、新薬の開発と耐性力の獲得はいたちごっこ状態です。

 

■薬剤耐性菌・多剤耐性菌

細菌は薬剤に対して、例えば下記のような様々な変化をして対抗します。また、これらにより薬剤耐性を獲得した細菌は、薬剤耐性の情報としてDNAに変異が入ったり、耐性の情報を持ったプラスミド(細菌の核の外に存在し、細胞分裂をしたときに引き継がれるDNA)を持ったりしています。そしてこの耐性の情報はプラスミドやファージ(細菌に感染するウイルス)を通じて、まだ耐性を持っていない細菌に移行や感染をして広まっていきます。

・薬剤の標的となる酵素を変化させる

・薬剤が効かないように攻撃(薬剤の構造を分解)して抗菌剤を不活化せる

・薬剤が菌内に入ってこないように膜の穴(ポーリン孔:グラム陰性菌の外膜の穴)の数を減らしたり薬剤を外にくみ出す機能を向上させたりする

 

■薬剤耐性ウイルス

抗ウイルス剤に対するウイルスの耐性は、標的の酵素の遺伝子に変異が起こり、薬剤が標的に結合できないようになって薬剤の作用が発揮できなくなるのがほとんどです。またウイルス自体がある種の酵素を欠乏しているか酵素に変異が起こっている場合にも耐性を獲得することがあります。

 

■終わりに

今世界中は新型コロナウイルスであるCOVID-19の話題で持ちきりです。人類が一日も早くこのウイルスをコントロール下に置けるようになることが待ち遠しい限りです。

私達獣医師は日頃から動物の診療に携わる中で日々感染症とも対峙してきました。日常の診療で今回書いたような細かい微生物学的なお話をすることはあまりありません。本来、感染症はヒトならば医師が、動物ならば獣医師が診断し、それぞれが治療方針を立て薬剤等を処方し、時にワクチンや消毒などの指導をするもので、患者さんは医師や獣医師が提示した方法に沿いながら個々の症例について微調整をしながらともに克服していくものだと思います。

ただ、世の中がこんなに感染症に振り回されているようでは患者さん自身が感染症をおこす原因や予防についてよく知り、専門家や医師、獣医師の言うことを受け身の姿勢で待つだけではなく、自らを守るすべを一つでも多く身に着けることも大切だと思います。

感染症は人類が撲滅や封じ込めに成功したもの、かつては猛威を振るったが今は治療や予防法が確立されたもの、地域によって過去の病気になりつつあるもの、それほど凶悪ではない代わりに日常的に周囲に常にあるもの、新しく出現した新興感染症などがあります。感染症は「ばい菌によってかかる」といった漠然としたものではありません。全ての感染症には原因、感染経路、宿主の要因、環境などの感染が成立するための要因があり、感染症の種類によってはワクチンや治療薬があります。

今回の内容はなるべく広く浅く書いたつもりです。でもいつもより難しい内容になってしまったかもしれません。しかし、「知識は武器になる」と私は信じています。噂や風評に左右されず、正しい情報をキャッチしてください。今世界の目の前の問題は新型コロナウイルス:COVID-19かもしれませんが、これからも従来からある感染症が問題になることや、また新しい感染症が出現することもあるかと思います。自分や家族を守るため、大切なパートナーである犬や猫をはじめとした動物たちを守るためしっかりと前を向いてこの時代を生き抜いていきましょう。

 

参考文献:好きになる微生物学 渡辺渡 講談社(2020年10月7日第7刷)

休み時間の微生物学第2版 北元憲利 講談社(2019年2月25日第5刷)

人も動物も怖いレプトスピラ症・SFTS

「感染症」というとどのようなものを思いうかべますか?

20世紀前半までの日本は、人でも肺炎、気管支炎、結核、胃腸炎などが死因の上位に来るような感染症の多い時代でした。20世紀後半になると予防医学や衛生環境も向上して感染症は減少し、「怖い病気」は、がん、脳血管疾患、心疾患やいわゆる生活習慣病などに取って代わられました。
ところが、今テレビをつけると「インフルエンザが大流行」、「新型インフルエンザに注意」、「中国でSARSが発生」、「中東でMERSが発生」、「新型コロナウイルス感染症の新たな感染者を確認」など感染症のニュースが盛んに流れています。インフルエンザ、新型インフルエンザは「インフルエンザウイルス」、SARS、MERS、新型コロナウイルス感染症は「コロナウイルス」でいずれも「ウイルス」による感染もしくは従来のウイルスが変異した(性質や形状が変わってしまうこと)ウイルスによる感染症です。衛生環境が向上した現代でもみるみるうちに広がっていく感染症は誰もが「怖い病気だな。気をつけないといけない。できる限り予防しよう。」と思っているのではないでしょうか。ただし、ここで忘れてはいけないのは「怖い感染症は新聞、テレビ、ネットのニュースで報道されているものが全てではない」ということです。例えば、上記の感染症は感染源に「ブタ」、「コウモリ」、「ラクダ」、「ネズミ」などが関わっていることも報道されているので(感染源が特定されていないものもありますが)「人と動物の間で行き来する病気がある」ということはすでにおわかりだと思います。今回は壮大な「感染症についての議論」はまず横に置いておいて、動物病院の獣医師として「人にも動物にも怖い感染症」として気になる病気を2つ挙げたいと思います。それは「レプトスピラ症」と「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」です。もちろん、「狂犬病」も怖い病気ですが「今身近にあり今日、明日感染するかもしれない病気」というわけではないので今回は除外します。

 

レプトスピラ症

レプトスピラ症は、げっ歯類を中心とした犬を含めた多くの哺乳類(野生動物、家畜、ペット)の腎臓に住みついて、感染した動物の尿中に病原性のレプトスピラ菌を排泄することにより水や土壌が汚染され、その汚染された水や土壌への接触や、汚染された水や食物を摂取することによって経皮および経口感染します。レプトスピラ症は、軽度の場合軽い風邪のような症状で済むことが多いですが、重症例では黄疸、重症肝炎、重症腎炎を起こし死亡することもあります。人の場合、かろうじて命を取りとめても一生重い肝炎に苦しんだり透析を続けなくてはいけなくなったりすることもあります。犬でも重症例では死亡、重症で命を取りとめたものや軽症で一見自然治癒したものでも腎臓内の菌が完全に除去されていないと犬自体は無症状のまま病原性のレプトスピラ菌を尿中に排泄し続ける「キャリア」となり人や犬に対する感染源となります。
レプトスピラ症は人も犬も「届出伝染病」に指定されており、レプトスピラ症を診断した医師は保健所に獣医師は家畜保健所に届出なければならないと定められています。つまり、レプトスピラ症は「人の命に関わる病気」ということです。
病原性のレプトスピラ菌を持ったネズミは田畑、草むら、土手、水たまり、河川などの水辺、下水、魚市場などに菌をばらまいていきます。もし、天井裏をネズミが走り回っていたとすれば住んでいる家も濃厚感染区域となります(室内飼育の小型犬がレプトスピラ症にかかったという報告もあります)。別荘地や旅行先、川や湖などでのレジャーも注意が必要です。
2019年は台風19号で日野市内でも内水氾濫が発生しましたが、洪水の後はレプトスピラ症の発生が増加すると言われています。レプトスピラ菌は数ヶ月~年単位で環境中に感染力を持ち続けるので、私たちの住んでいる地区も安心してはいられません。ネズミが運ぶ病気というと郊外の病気のようなイメージがありますが、2007年1月~2016年4月末の国内感染報告の1割は東京でした。また、2018年には武蔵野市、昭島市でも発生しています。診断に至らずに届出されていないものもあると考えると、潜在的なレプトスピラ症やキャリアの犬は思いのほか多くいるのかもしれません。残念なことに、今国内では人用のレプトスピラ症のワクチンは製造されていませんので人は予防、早期発見、早期治療が対策となりますが、犬にはレプトスピラ症の代表的なタイプを予防することができるワクチンがあります。レプトスピラは世界中で250種類以上のタイプがみつかっており、そのうち日本には15種類のタイプがあると言われています。その中には病原性の強いものと弱いものがあるのですが、犬のレプトスピラ症のワクチンは人・犬ともに病原性の強いもの、犬のレプトスピラ症のうちの50%を占めるもの(このタイプは、げっ歯類⇒犬の感染ルートのほかに犬⇔犬で感染を広げるものです)などが存在しています。今後予防できるレプトスピラのタイプも増えていくことが期待されます。
犬のワクチンは法律で接種が義務づけされている「狂犬病」の他に「混合ワクチン」として任意接種のワクチンがあります。ワクチンは年々品質が良くなり、毎年接種しなくても接種前に採血をして「抗体価」を調べ「現在特定の病気に対する抵抗力は追加のワクチンが必要なほど低下しているか、それともまだ十分な抵抗力を持っているか(ワクチンの追加接種が必要かまだ必要ないか)を見極める方法も徐々に広まってきています。WSAVA(World Small Animal Veterinary Association:世界小動物獣医師会)ワクチネーションガイドラインでは、狂犬病は年1回の追加接種が必要だが、狂犬病以外のコアワクチン(犬の場合ジステンパー、犬パルボウイルス感染症、犬アデノウイルス(2型)(犬伝染性肝炎:アデノウイルス1型も予防)、猫の場合猫汎白血球減少症、猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症)は原則3年以上の間隔をあけての接種、ノンコアワクチン(上記以外のワクチン、レプトスピラ症はノンコアワクチンに含まれます)はリスクにより必要に応じて接種することが推奨されています。これは「すべてのワクチンの接種は3年に1回でよい」というものではありません。あくまで、抗体価を測定し、根拠に基づいて必要十分なワクチン接種を実施することを推奨するものです。ちなみに現在流通しているワクチンでは、レプトスピラ症のワクチンは最も優れたワクチンでも年1回の追加接種が必要だというデータが出ています。2020年2月現在、日野市、国立市、府中市、立川市、多摩市、八王子市ではレプトスピラ症発症の届出はありませんが、私たちの住む多摩地区は川の流れる街であり年々巨大化する台風のことも考えるとレプトスピラ症の予防についてもう一度考え直した方が良いかもしれません。今接種可能なレプトスピラ症ワクチンは「犬のワクチン」ですが、犬を介して人の健康と命を脅かす可能性のある病気を予防するためのものでもあることを知っておいてください。

 

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)

SFTSは2011年に中国の研究者らによって発表された新しいウイルスによるダニ媒介性感染症(マダニに咬まれることによって感染が広まる病気)です。SFTSウイルスが発表された当初は感染するのは人だけだと考えられていました。しかし、2017年にたて続けに猫、犬、チーターに発症が認められました。SFTSウイルスは人、野生動物、家畜、ペットなど様々な哺乳類が感染しますが、2020年2月現在で発症の報告があるのは人、犬、猫、チーターのみです。また、SFTSは致死率が高く、人で6.3~30%、犬で29%、猫で60~70%、チーターで100%と報告されています。鳥の感染は報告されていますが詳しいことは調査中のようです。
SFTSウイルスは、病原性ウイルスを持ったマダニが卵をうむと卵を介してウイルスが伝わり、大量のウイルスを持った幼ダニが生まれてくること(マダニサイクル)と、病原性ウイルスを持ったマダニに咬まれた人や動物がウイルスに感染し、その一部は血中にウイルスを持ち続け(ウイルス血症)、ウイルス血症になっている人や動物を咬んだマダニは新たにウイルスを獲得する(動物サイクル)の2つのサイクルが合わさって無数の病原ウイルス保持マダニが増えていくと考えられています。
SFTSを発症した場合は、人、犬、猫とも発熱、元気消失、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)、白血球減少症、血小板減少症、黄疸、肝酵素上昇、出血傾向、(他に人では頭痛、筋肉痛、意識障害など)などが認められます。さらに、SFTSのウイルスはマダニに咬まれるだけでなく、ウイルス血症を起こしている動物の排泄物や唾液を介しても感染することがわかっています。2020年2月現在では人、犬、猫とも西日本での発症に限られていますが、発症の報告はないものの、ウイルスを保有している動物は野生動物も含めると徐々に西から東へ分布域が拡大してきているという報告があります。季節的には3月頃から発生が増え始め、4月をピークとして11月までが発生の多い時期と考えられていますが、2019年は2月にも発生が見られたので冬場も注意が必要だと考えられます。SFTSは2011年に初めて報告された新しい感染症なのでまだわかっていないことも多く、徐々に集まってくるデータを分析している最中でもあります。現時点でわかっていることは①SFTSのウイルスを持ったマダニは猛烈な増殖力で西日本から東日本に向かって分布が拡大してきていること、②SFTSは病原性ウイルスを持ったマダニに咬まれることやSFTSウイルスを保持している犬や猫などの動物に濃厚接触することで感染する、③マダニに咬まれることによりウイルス血症となった動物は全てが発症するわけではなく、見かけ上無症状で血液中にウイルスを持って感染源(唾液、糞尿からウイルスを排泄している)となっているもの(キャリア)が一定数いて増え続けている可能性があることなどです
2013年3月4日から2020年1月29日までに届出られた、人での発症例のデータ解析によると、SFTSはこれまでに人で498人の患者(発症者)が報告されていますが、2019年の人での発症数は過去最多の102名となっています。人をSFTSから守るためには、草むらなどマダニの多く生息するところにはなるべく近寄らない、山歩きや草むらに近づくときは長袖・長ズボン、首周りのガードをして極力マダニに咬まれないようにする、飼育している犬や猫のマダニ予防を徹底する、万が一自分の飼育している犬や猫にSFTS発症の可能性がある場合速やかに動物病院を受診して診断を受け人への感染を防ぐことが大切です。また、2020年の1月には、北海道で山菜採りに出かけてマダニに咬まれた人にSFTSによく似た症状を引き起こした新しいウイルスもみつかっています。
マダニが媒介する病気は他にも複数知られているので、地域、季節を問わず注意が必要です。まず、身近な自分の家族である犬猫のマダニ予防から始めてみてはいかがですか?

参考文献:NIID国立感染症研究所HP https://www.niid.go.jp
レプトスピラ症とは
重症熱性血小板減少症(SFTS)
IASR Vol.37 p.103-105:2016年6月号 レプトスピラ症2007年1月~2016年4月
IASR Vol.40 p.118-119:2019年7月号 SFTS発症動物について(イヌ、ネコを中心に)
IASR Vol.40 p.116-117:2019年7月号 動物におけるSFTSV感染の疫学調査

IASR Vol.41 p.11-13: 2020年1月号 北海道における新規オルソナイロウイルス(エ

ゾウイルス:Yezo virus)によるマダニ媒介性急性発熱性疾患の発見

レプトスピラ症とは

2018年(平成30年)は、犬のレプトスピラ症発生について東京都内で2件の届出がありました。
1例目は昭島市でパピヨン(6月13日届出 10歳 オス)、2例目は武蔵野市でミニチュアダックスフンド(11月5日届出 10歳 オス、その後死亡)でした。

レプトスピラ症はズーノーシス(人獣共通感染症)であり、獣医師がレプトスピラ症の動物を発見したときは家畜伝染病予防法に基づき、都道府県に届け出なければならないことになっています(届出の対象となるのは7種類の血清型で、対象動物は牛、水牛、鹿、豚、いのしし、犬です)。

現在犬レプトスピラ症の届出の報告は西日本に多い傾向にはありますが全国的に発生が認められている病気です(不顕性感染や突然死、診断不十分などから届出に至らなかったものも含めると、届出数よりも多くの発生があることが考えられます)。
流行している地域では流行しているレプトスピラ症のタイプ(血清型)にあったレプトスピラ症のワクチンを犬に接種することが推奨されています。

2018年は都下でたて続けに2件の届出がなされたので今後私たちの住む日野市・国立市・府中市・立川市・多摩市・八王子市周辺もより注意が必要になってくるかもしれません。

レプトスピラ症とは、運動性のあるらせん状の細菌(スピロヘータ)で、病原性のあるものと病原性のないものの2種類に分類され、血清型(レプトスピラ症のタイプ)は250種類以上あります。
そのうち、国内でレプトスピラ症の原因となったものは14種類ほどだといわれています。感染の可能性があるのは人・犬・猫・家畜(牛・豚・馬など)・げっ歯類・野生動物・爬虫類・両生類など多くの動物(100種類以上)です。

レプトスピラは人や動物の体に入り込み、肝臓や腎臓で増殖し、尿とともに体外に排泄されます。そのような尿に汚染された水や土壌との接触によって皮膚の微細な傷や健康な粘膜から感染します。
けんかや性交・汚染された敷材・洪水や台風の後の泥水などからも感染することがあり、特にネズミは自身に害を与えずに病原体をまき散らす可能性のある要注意な動物となります。

犬のレプトスピラ症の潜伏期間は5日~2週間とされ、臨床症状から不顕性感染(感染しても症状は明らかに示さないもの)・出血型・黄疸型などがあります。
犬ではほとんどの場合が不顕性感染ですが(不顕性感染でも病原体は排泄します)、出血型は1~2日の発熱後に食欲不振・嘔吐・下痢・結膜充血・出血傾向などを示し、黄疸型は黄疸と血色素尿が見られ、出血型・黄疸型のいずれも甚急性あるいは亜急性、慢性の経過をとり死亡します。
甚急性のものは進行がはやいため腎不全や肝不全を認める前に、亜急性のものは肝疾患・腎疾患の複合的な症状がみられ腎不全により高確率で死亡します。
甚急性・亜急性のものから生存した少数の犬は慢性経過をとり、慢性の肝疾患・慢性の腎疾患により死亡します。

人に対する感染と予防についてですが、哺乳類に感染するレプトスピラの全てのタイプは人にも感染するものと考えられています。
感染している動物の尿・汚染した水・保菌動物には素手で触らないようにしてください。レプトスピラに汚染されている水や食物を口にすることによる経口感染にも注意が必要です。感染が流行している地域では流行しているレプトスピラのタイプ(血清型)にあったワクチンの接種が有効とされます。
日本国内だけでなく、東南アジアの一部のレプトスピラの流行地域では不用意に水に入らないこと、台風や洪水の後には特に注意が必要になります。
感染が疑われるときは速やかに医療機関を受診してください。

犬については、草むら・河川敷・堤防・農地や雑木林がお散歩コースに含まれていたり、川での水遊びや山遊び、またドッグランなど不特定多数の犬が集まるところに出入りする可能性のある場合は、レプトスピラ症の予防も含めたワクチンを接種したほうがよいと思われます。都市部のドブネズミによるレプトスピラの拡散について考えると一概に都市部だから安全ともいえないようです。
ただし、犬についても病原性のある全てのレプトスピラに対するワクチンがあるわけではないので、日頃から不用意な拾い食いやたまり水を飲ませないこと、不調が見られた場合速やかな動物病院への受診も大切です。
正しい情報と知識をきちんと持ったうえで、楽しい愛犬との生活を安全にお過ごしください。

ワクチン接種プログラムについて

犬や猫を飼われている方は愛犬や愛猫にワクチンを接種したことがあると思います。
ワクチンには大きく分けてコアワクチン(世界中で感染が認められる病気で、命にかかわる可能性があるため、できる限り全ての犬や猫が接種することが望ましいとされるワクチン)と、ノンコアワクチン(地域の環境や各個体のライフスタイルによって接種することが望ましいとされるワクチン)の2つがあります。
日本では犬のコアワクチンは、狂犬病(法律で1年に1回の接種が義務付けられています)・犬ジステンパー・犬パルボウイルス感染症・犬伝染性肝炎(犬アデノウイルス1型感染症)・犬伝染性喉頭気管炎(犬アデノウイルス2型感染症)の5つ、猫のコアワクチンは猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)・猫ウイルス性鼻気管炎・猫カリシウイルス感染症の3つがあります。
犬のノンコアワクチンは、犬パラインフルエンザ・レプトスピラ症など、猫のノンコアワクチンは猫白血病ウイルス感染症・猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)・クラミドフィラ フェリス感染症などがあります(犬コロナウイルス感染症のワクチンを積極的に接種するかどうかは意見の分かれるところです)。

個々の病気についての説明は今回は割愛しますが、ほとんどの犬や猫は母親の母乳から免疫をもらい(移行抗体)赤ちゃんの頃は母親から受け継いだ免疫に守られて過ごします(母犬・母猫がワクチン未接種などで免疫を持っていない場合にはもちろん子犬・子猫には受け継がれません)。また、母親から受け継いだ免疫が子犬・子猫から消失する時期には個体差があり、母親から受け継いだ免疫の量が多いとワクチンはそれにはねつけられて十分な効果を発揮できないため、初年度は複数回の接種が必要になります。
犬の場合、通常は1回目が生後6~8週後(母犬からの免疫が最も早く消失したケースを想定)、その後約1か月ごとに2回目、3回目を接種します。2回接種になるか3回接種になるかは子犬の最終ワクチンの接種時期が生後12週を超えたところ(ワクチンによっては生後16週を超えたところ)で、母犬からの移行抗体が完全消失し、自分の力で抗体を作り出せる時を初年度の最終とします。
その後6か月または1年後にワクチンのより確かな効果(ブースター効果)を得るために追加接種をします(ワクチンの免疫がついていない可能性のある犬や、環境、ワクチンの種類によってはさらに追加接種が必要な場合もあります)。
猫の場合は、生後9週令以上で1回目、2週間から1か月後までに2回目、ブースターとして1年後に追加接種することが基本となります(猫にはもっと頻回接種が必要だという説もあります)。その後の成犬・成猫時のワクチン接種はどうしたらよいのかは、現在獣医師の間でも議論されているところです。WSAVA(世界小動物獣医師会)のガイドラインでは、『子犬時にしっかりとしたワクチンプログラム(上記の接種プログラム)を実施した場合はコアワクチンについては3年に1回(ただし、日本では狂犬病のワクチンは年1回の接種が義務付けられているため1年ごとの接種となります)、ノンコアワクチンについては年に1回の追加接種でよい』とされています。猫については『猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)は3年に1回、猫ウイルス性鼻気管炎と猫カリシウイルス感染症は1匹のみの完全室内飼育で感染リスクの少ない場合は3年に1回、多頭飼育や室内外を行き来したり感染のリスクの高いケースでは毎年の接種』が推奨されています。ただし、海外と日本国内では認可・流通しているワクチンの種類が異なるので、なかなか海外の推奨プログラムをそのまま日本に当てはめるのは難しいところです。
本来であればワクチン接種の前に血液検査で予防を必要とする病気の抗体価が十分あるのか、落ちてきているのかを見極めて必要最小限のものを接種することが理想的なのでしょう(希望される方は血液検査にて各病気の抗体価を調べることはもちろん可能です)。
ただ、抗体検査は1つ1つの病気について測定が必要なので費用のことも含めなかなか難しいところです。また、トリミングやホテル、ドッグラン、集合住宅でのワクチン接種なども1年ごとの実施の証明が求められている現状もあるので、今のところ日本では1年ごとに1回毎年接種していくことが現実的なのでしょうか。

かつて狂犬病のワクチンは春と秋の年に2回の接種が義務付けられていましたが、現在は年に1回の接種でよいとされています。
近い将来、犬・猫のワクチンプログラムは変わっていくかもしれませんね。

血液検査のすすめ

初めて家に迎えた時に、あんなに幼かった子犬や子猫たち・・・。ミルクからふやかしたフード、そしてウエットフードやドライフードをたべられるようになり、今では自分からごはんやおやつを催促し、それどころかごはんのえり好みまでするようになりました。成犬、成猫になってから迎え入れた動物たちも、はじめはおそるおそる行動していたものの、今では生まれた時からここにいるような顔をしています。あっという間に大人になって、かわいいおじいちゃん、おばあちゃんになってきている動物たちもいることでしょう。動物たちがもたらしてくれる幸福感は計り知れないものがあります。共に暮らす幸せな日々はずっとずっと続いてほしいものです。

しかし、家族に幸せを届けてくれる動物(犬・猫)たちですが、人間の約5倍のスピードで年をとっていきます。気がつくと白髪も増え、歯も弱り、白内障や耳が遠くなったり・・・。若い頃のように活発に動きまわって遊ぶことも減って、眠っている時間が増えてきたりします。「年のせいかな」と思うこともあるでしょうが、内臓や心臓の病気、関節の病気が隠れていることもあります。自然な老化としてうけとめなくてはならないものもありますが、気づいてケアしてあげることでより快適な時間を長く過ごすことができることもあります。なかには生まれつき持っている病気がある動物や中年期より前に病気を発症しているケースもあります。(品種により生まれ持った体質、なりやすい病気なども数多く知られています。)目に見える症状が出る頃には病気が進行していることがほとんどです。

人間にも40歳過ぎたら人間ドックの案内があるように、大切な動物たちも健康に見える時に「健康チェック」「早めのケア」としての血液検査をおすすめします。また、持病のためお薬を飲んでいる動物たちも、肝機能・腎機能などの定期的な血液検査をおすすめします。

血液検査で全ての病気を把握することはできませんが、家族みんなで動物たちの健康を考える良い機会になってくれればと思います。動物の健康状態や検査結果、または飼主さんの希望によりその他の検査(尿検査、レントゲン検査、超音波検査など)も実施できます。まずはご相談ください。

※より正確な血液検査のデータを得るために、食餌を与えずに(12時間絶食)ご来院ください。

1 2 3 4